第16話 発動条件
メインキャビンでユウとショーイチが話していると、ゴローとマリアがやってきた。
「おっ、2人とも個室から出てきたのか」
ユウが云った。
「ユウとショーイチは、ずっとここで?」
「ああ、そうだ」
ショーイチが云った。
「もしお腹が空いていたら、そこに小さなキッチンがあるから、何か作って食べるといいぞ」
ユウが、メインキャビンの後部にある小さなキッチンを指さした。
「ゴローさん、お腹空いてませんか?」
「いや、今は――」
ゴローが云いかけたとき、ゴローのお腹が盛大に鳴った。
「あ……」
ゴローが顔を赤くし、マリアが優しく微笑む。
「それじゃあ、私が腕によりをかけて料理を作りますね!」
マリアはそう云うと、小さなキッチンの前に立ち、料理を始めた。ゴローはユウとショーイチが座っている場所に向かい、イスに腰掛ける。
「いつの間にか、お腹が空いてたみたいだ」
ゴローはそう云って笑った。
「なぁ、ゴロー」
「え?」
「マリアさんと何かあったのか?」
ショーイチに訊かれ、ゴローは顔を赤くした。
「い……いや、何もないよ……」
ゴローはそう云って誤魔化す。
「本当か……?」
ショーイチは無性にゴローをいじりたくなった。
「本当だってぇ~……」
ゴローは必死になって誤魔化す。そんなゴローは、どこか可愛らしい。
「どうかしましたか?」
ショーイチが顔を上げると、マリアが料理の乗った皿を持って立っていた。
「あっ、マリアさん……」
「ショーイチさん、あんまりゴローさんをいじめちゃダメですよ? 人間界でも仲は良かったんですよね?」
マリアの声は優しかったが、どこか恐ろしさを含んでいた。
「は……はい」
ショーイチはそう答えるしかなかった。
「ゴローさん、料理できましたよ」
マリアはそう云って、ゴローの目の前に料理を置いた。ゴローが喜んで食べていた、あのフライドチキンのような料理だ。
「おぉっ! これは!」
「ゴローさん、これ好きでしたよね? いつも『美味しい、美味しい』と云って食べていたので、作ってみたのですが……」
「いただきまーす!」
ゴローは早くもチキンにかぶりついた。
「な、なぁ、ユウ……」
「間違いないな……」
ユウとショーイチは、そっと頷いた。2人の前には、マリアの手料理を美味しそうに食べるゴローと、それを嬉しそうに見つめるマリアがいた。
「ユウ」
「ん? どうした?」
ショーイチから呼ばれて、ユウはそれに反応する。
「俺って、確か……火属性? だったよな?」
「ああ、本部で詳しく調べてみないと分からないが、あんなすごい火の塊を繰り出したんだから、多分そうだろう」
「俺が火属性なら……ゴローはどうなんだろう?」
ショーイチはそのことが気になっていた。ゴローはショーイチと違い、左目が空色だ。この違いには、きっと何かしらの意味があるに違いない。
「……正直、今は分からないな。本部で詳しく調べるか、又は――」
「……又は?」
「カプシカム司令官が云っていたように、ゴローが、ショーイチのように何かのはずみで力を発揮すれば、何か分かるかもしれないな」
2人はゴローを見た。ゴローはマリアと人間界のことについて話している。
「そうだ! ショーイチ、クヌギ村でピックアップトラックを燃やしたとき、どんな気持ちだったか覚えているか?」
「覚えているけど、それが……?」
「魔法を発動するときは、魔法を使う者の気持ちが影響を与えることが多いんだ。何かヒントになるかもしれない」
ユウが云う。
「気持ちが……?」
ショーイチは、ピックアップトラックを燃やしたときのことを思い出す。そういえば、あの時……。
「確か……あの癇に障る声にキレたっけ」
「ということは……かなり怒っていたのか」
ショーイチは頷いた。
「それで、そのまま思いつくままに動いていたら……火の塊でピックアップトラックを燃やしてた」
「なるほどな……ショーイチの魔法の発動には、怒りの感情が作用していたのか」
ユウはそう云うと、ペンを取り出し、メモ帳に書き込んだ。
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