第14話 カプシカム司令官
クヌギ村を出発した4人は、アメ車でエリアKNの支部へと向かっていた。
「このアメ車って……意外と頑丈なんだな」
ショーイチが、先ほどのことを思い出しながら云った。
「ああ。人間界の自動車よりは、頑丈だ」
ユウが少しだけ笑って云う。
「この車は、たとえ最高速度で衝突しても大丈夫なようにできているんだ」
「ひぃ」
いったいどういう仕組みになっているのか、ショーイチには分からなかった。
「さて、エリアKNにはもうすぐ入るけど、そこから支部まではもう少しかかる。ちょっとスピードを上げようか」
ユウはそう云うと、アクセルをゆっくりと踏み込んでいく。アメ車は緩やかに加速し、スピードメーターの針が動いていく。
「さっきの急加速……すごかったなぁ」
ショーイチは、ユウが兵士を蹴散らすためにやった急加速を思い出していた。
「もう一度、やろうか?」
ユウがそう云って、コラム式のシフトレバーに手を掛ける。
「や、やめてぇ!」
ショーイチが変な声で叫び、ユウは笑う。
「冗談だ、冗談」
コラム式のシフトレバーから手を離し、手をハンドルに戻した。
すると、後部座席からゴローが云った。
「支部までは、どれくらいかかるの?」
「そうだなぁ……あと2~3時間くらいかな」
ユウは地図を見て云った。
「まだまだ先ですね」
マリアが云う。
「ああ。だから気長に行こう」
ユウはそう云って、アメ車を走らせた。
昼頃になり、4人はエリアKNの支部へとたどり着いた。門番はサマムから連絡を受けていたらしく、すぐに通してくれた。
指定された位置にアメ車を停め、4人は降りた。
「なぁ……ユウ」
ショーイチが云う。
「ん?」
「さっきあのピックアップトラックが現れる前、支部に連絡するはずだったよな?」
「ああ。だが、それがどうかしたのか?」
「どうやって、支部に連絡するんだ? 俺、ずっとそれが気になっていたんだ。そういう魔法でもあるのか?」
「……あぁ、これを使うんだ」
ユウはそう云って、ポケットからホワイトバンドのようなものを取り出した。
「つけてなかったな。ちゃんとつけとくか」
ユウは左手にそれをつける。
「それは……?」
ショーイチが指さして訊いた。
「これはメッセンジャーバンドだ。『リベレーター』の通信手段で、これを使って仲間と連絡のやりとりをするんだ。人間界でいう……ケータイ? いや、トランシーバーのようなものかな」
「すげぇ……」
携帯電話よりも、ある意味では便利かもしれない。ショーイチはそれが欲しくなった。
すると、1人の男がこちらに向かって歩いてきた。背の高いその男は、顔に大きな傷跡があり、迫力がある。
「あれは誰だ?」
ショーイチが云うと、ユウの表情が変わった。
「あれは……!」
男は、4人の前に来て、立ち止まった。
「これはユウ、ご無沙汰」
表情に合わず、男の声は柔らかで貫禄のあるものだった。
「カ、カプシカム司令官!」
ユウは緊張に満ちた声で云った。
「いやいや、そんなに緊張する必要はないよ。これまでに何度も云ったじゃないか」
「は、はい……」
そうは云われたものの、ユウの緊張は解けていないようだった。
「この2人が、例の……?」
「……あっ、はい! アポストロス・ゲードによって人間界から連れてこられた、ショーイチとゴローです」
「ショーイチです」
「ゴローです」
2人は挨拶した。カプシカムと呼ばれた男は、ゆっくりと頷いた。
「そうか。私はカール・カプシカム。我がレジスタンスの『リベレーター』で司令官を務めている者だ。よろしく」
礼儀正しく、カプシカムは自己紹介した。
「君達も、魔法が使えるのか?」
「あ……え、えーと」
「ショーイチは先ほど、火属性とみられる魔法を使いました。ゴローはまだ使えるかどうかは分かっておりません」
ユウが説明した。
「ほう。そうなのか」
「カプシカム司令官、ゴローさんは魔法を使えるんでしょうか?」
マリアが心配そうな声で訊いた。
「まぁまぁ、そんなに焦ることは無い。ふぅむ……」
カプシカムは、空色に変わったゴローの左目を見た。
「どうやら適性はあるようだ。きっとなんかの拍子に使えるようになるだろう」
そう云うと、カプシカムはユウを見た。
「早速だがユウ、ブラシカから話を聞いているか?」
「えーと、確か……エリアHDの本部まで直行できる乗り物があると聞いています」
「よし、ならば話は早い。ついてきなさい」
カプシカムは歩き出し、4人はそれについて行った。カプシカムはそのまま。4人を倉庫のような建物の中に案内した。
「これがブラシカの云っていた乗り物だよ」
4人が見上げると、4人は同時に目を丸くした。
「こ……こりゃあなんだ!?」
ショーイチとゴローが云った。目の前には、未確認飛行物体のようなものが鎮座している。小型だがどうやら輸送機らしく、男たちが荷物を積み込んでいる。
「これが……その乗り物ですか」
「ああ。人間界で秘密裏に製造され、密輸されたフライングマシンというものだ。後でユウの車と荷物を積み込んでおくから、先に乗って待っていてくれ」
「えっ、いいんですか?」
「ああ。みんな長旅でいろいろと疲れているだろう? 移動している間は、フライングマシンの中でゆっくり休んでおくといい」
「ありがとうございます!」
ユウが丁寧に頭を下げた。
「ああ、そうだ。ショーイチくん、ゴローくん」
カプシカムが二人を手招きして呼ぶ。2人はカプシカムに近づいた。
「君達にも、これを渡しておこう」
カプシカムは2人にメッセンジャーバンドを手渡した。
「これが我々『リベレーター』の仲間であることの証明になり、通信手段にもなる。君達もこれで、我々『リベレーター』の正式な仲間だ」
「あっ、ありがとうございますっ!」
二人はそう云って頭を下げた。
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