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アテーナーの戦士たち  作者: ルト
第2章
13/20

第12話 予感

 朝が来た。

 テントの外が少しずつ明るくなり、地平線から朝日が顔を出す。


「……ん~」


 最初に目を覚ましたのは、マリアだった。


「ふわぁ……良く寝たぁ……」


 起き上がったマリアは、大きく伸びをした。まだ少し眠い目を擦り、辺りを見回す。


「みんなまだ眠っていますね……あら?」


 マリアは、ゴローが一人だけ自分の近くで座って眠っていることに気がついた。ユウとショーイチは、毛布を羽織って横になって眠っている。しかし、ゴローだけは座ったままだ。


「ゴロー……さん?」


 ゆっくりと、マリアはゴローに語りかける。ゴローはショットガンを握りしめたまま、熟睡していた。


「どうして、銃を握ったままで……?」

「ん……んーっ」


 すると、ユウが目を覚ました。


「ユウ、おはようございます」

「あぁ、マリアか。おはよう」


 ユウはそう云って、大きく伸びをした。


「ユウ、ゴローさんだけ、なぜか座ったまま寝ているのですが……」

「……あぁ、ゴローか」


 ユウは昨晩のことを思い出して、少し笑った。


「夜にちょっと用を足しに出て、テントに戻ってきてみたら、ゴローがマリアの前で銃を持ったまま眠っていたんだ」


「ゴローさんが……?」


 マリアが目をぱちくりさせる。


「まるで、マリアを守っているみたいだったな」

「えっ……」


 マリアは驚き、そして頬を赤らめる。私を、守っているようだった?


「ゴローさんが……私を……?」

「ん……んう?」


 すると、ゴローが目を覚ました。


「あれ……? いつの間に寝ちゃったんだろ……?」

「ゴローさん」


 ゴローはマリアの方を向く。


「あっ、おはよう、マリアさん」

「おはようございます」


 マリアは笑顔で云うと、ゴローの手をそっと握った。


「わっ!?」


 突然手を握られて、ゴローの眠気は吹き飛ぶ。ユウも驚き、目を丸くした。


「ま、マリアさん!?」

「ありがとうございます。ゴローさん」


 突然の感謝の言葉に、ゴローは面食らい、頬を赤くする。いったい何が起きたのか、全く訳が分からない。ゴローの頭の中は混乱するばかりだった。

 マリアも頬を赤くした。


「あの……今日も美味しい朝ごはん、作りますから!」


 そう云うと、マリアはゴローの手を離し、テントの外に出て行った。ゴローは少し名残惜しそうに、自分の手を見つめていた。


「マリア……意外と大胆なのかもな」


 ユウが呟いた。


「……ユウ、マリアさん、何かあったのか?」


 少しボケーッとしながら、ゴローが訊いた。


「フフ……さぁな」


 ユウはそう云うと、まだ眠っているショーイチを起こす。


「ショーイチ、もう朝だ。そろそろ起きろ」

「んー……」


 ショーイチは少し動いただけで、起きなかった。


「おい、ショーイチ、そろそろ起きろ」


 ユウが再びショーイチを起こそうとする。


「ん、あああ~」


 ショーイチが変な声を出しながら、身体をくねらせる。


「もー少しだけ」

「ショーイチ」

「も、もう少し……」


 すると、金属音がした。ショーイチが眼を開けると、ユウが回転式拳銃を持っていた。ハンマーが降りている。それは、いつでも射撃可能な状態であることを意味している。


「ひぃっ!」


 短く叫んで、ショーイチは飛び起きる。


「ごめんなさい」

「……全く、やっと起きたか」


 ユウは回転式拳銃が暴発しないように、ハンマーを元の位置にそっと戻した。そして回転式拳銃をホルスターに戻す。


「心臓に悪いなぁ……」

「さっさと起きないショーイチが悪い」


 ユウはキッパリと云った。


「はぁぁ……」


 ショーイチはため息をついた。



 マリアが非常食で作った朝食を食べた後、四人はテントを畳み、荷物をアメ車に積み込んだ。いつまでも一か所に留まりつづけるわけにはいかない。


「忘れ物は無いか?」


 ユウが荷物の入ったアメ車のトランクを閉めて訊いた。


「ないよ」

「ないぜ」

「ありません」


 ユウ以外の三人が答える。ユウは頷いた。


「よし、じゃあ出発しよう」


 ユウは運転席に飛び乗り、キーを挿し込んで回した。アメ車が力強いうなり声を出す。

 三人が飛び乗ると、ユウはギアをドライブに入れ、パーキングブレーキを解除してアクセルを踏み込んだ。アメ車は一気に加速して、そのまま道路を疾走していく。


「しばらく道なりだが、途中でここを通らないとな……」


 ユウが地図を見ながら云う。


「ここって?」

「この村だ」


 ユウは地図のルート上にある一つの村を指さした。『クヌギ』という名前の村らしい。


「ここを通れば最短距離だ」

「政府の駒は、大丈夫なのか?」


 ショーイチが訊いた。


「小さな村だ。一応政府の駒の勢力圏だが、きっと大丈夫だろう」

「そうだといいけどな……」


 ショーイチは少し不安そうに云った。


「ビビってるのか?」


 ユウが少し意地悪そうに訊いた。


「いや、ビビっているというか……緊張しているような感じだ」


 正直にビビっている、とはさすがに云えなかった。ショーイチにも、一応そういったプライドはある。しかし、ただビビっているだけではなかった。何か、嫌な予感がする。どうしてそう思うのかは分からないが、ショーイチの中の何かが警告しているような気がした。


「……ユウは大丈夫なのか?」

「前にも云ったように……もう慣れたよ」


 ユウはそう云って、アクセルをより踏み込み、アメ車をさらに加速させる。スピードメーターの針が動き、景色が先ほどよりも速く移り変わるようになる。

 すると、トンネルに入った。コンクリート製の覆いが、人工的な光と共にアメ車を包み込む。トンネルの中に他の自動車はいない。


「……長いトンネルだな」


 ショーイチが呟いた。トンネルは、思っていたよりも長く、出口が見えてこない。


「そうだな。こんなに長いトンネルは、私も初めてだ」


 ハンドルを握るユウも、トンネルの長さに驚いているらしかった。


「マリア、ゴロー。後ろは大丈夫か?」

「今のところはね」


 ゴローが答えた。マリアも頷いてそれに同意する。


「今は大丈夫です」

「よし。それなら安心だな」


 ユウは新しい缶ジュースを開け、口をつける。

 しばらくして、ショーイチが呟いた。


「それにしても……長すぎないか? このトンネル」


 人間界にも長いトンネルはあったが、いくらなんでも長すぎるような気がした。


「そうだな。確かに、ちょっと長すぎるが……」


 ユウがそう云いかけたとき、前方に光が見えてきた。


「おっ、やっと出口だ」


 ユウはそう云うと、アクセルを踏み込んだ。一刻も早く、この長いトンネルから出たかった。

 トンネルから出ると、辺りが一気に明るくなり、目が痛くなった。


「眩しいっ!」


 ゴローが思わず云った。


「うお、広い!」


 ショーイチが云った。目の前には、広い平野が広がっている。そして少し先に、小さな町か村が見えた。


「あそこがクヌギという村みたいだな」


 ユウが地図と見比べながら云った。


「おー、あそこで休もうぜ!」

「それはいいですね」


 ショーイチの発言に、マリアも同意する。


「いいね、いいね。休憩しよう」


 ゴローも乗り気だ。


「そうだな。あそこで少し休憩しよう」


 ユウもそれに同意し、クヌギ村で休憩することになった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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