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ドラゴンスレイヤー/アベンジャー~少女2人~

町を囲っている壁なんて全く役に立たない!真夜中に赤いアイツは突然空からやって来た!

体から無数に飛びでた管から排出している毒に火が付くとアイツは体中から何本もの火を生やした。

アイツが動くだけで町は燃やされ、住人は全員食われた。





私だけが生き残った。

全身真っ赤に覆われた悪魔を私は忘れないだろう。

・・・そして・・・月日が流れた。






目が覚めるとベットで裸の男が隣りで寝ていた。

「な!?」汗が噴き出した。シーツをめくって自分の体を見る。上半身裸だった。



「きゃああああ!!」

シーツを体に押し当て悲鳴を上げた私に驚き、隣りの男は驚いて飛び起きベットから転げ落ちた。

転げ落ちた衝撃で目を覚ました男はベットの下に置いてあった剣を手に取り

「何だ!何だ!」と半分寝ぼけた頭で辺りを見回した。



急いで私はシーツをむしり取って体に巻く!



「あ、あ、あ、あなた誰!?」男にさした指が定まらず上下左右に目まぐるしく動きながら私の喋りは完全にどもっていた。

全く知らない男が清廉潔白な乙女の隣りで寝ていたのだ、完全にパニックである。

周りを見渡しても身に覚えのない部屋だった。

「ここどこ!?」



「ええ?覚えてないの~?かなり酔っぱらってたからなぁ君!ショックだなぁ。ここは宿屋だよ?一緒に泊まったじゃないか?」

男はベットに肘を付き、頬づえを付きながら嫌らしい顔でニヤけていた。



酔っぱらっていた?一緒に泊まった!?最悪だ!!ヤツの仕業だ!!



目の前の男は細身の優男。顔は塩顏とでもいうのだろうか?爽やかなタイプでプレイボーイ風だが私のタイプでは全然ない!

私はどっちかというと髭の似合うガッシリとしたタイプが好きなのだ。

なのでこの男をお酒に誘って、または誘われて宿場で添い寝をしようとは思わない!



「君何だか昨日と雰囲気違うね~。酔っぱらうと性格変わるタイプ?」

喋り方が全く男らしくない。俺に着いて来いというタイプではない。

この猛者がひしめく時代にそんな性格で闘っていけるのだろうか?



「わ、私たち・・・その・・・やった?」

うら若き乙女のこの私が昨晩の営みを聞かなきゃならないなんて!

質問したこの時の私の顔は熱せられた鉄のように真っ赤になっていたに違いない。



「それも覚えて無いのか~・・・」ニヤニヤしながら男がその続きを言おうとした時、私はバッと平手で言葉を制止し

「やっぱり止めて!言わなくて良い!」と目をつむりながら怒鳴った。

やっぱり聞きたくない!聞かない方が幸せなのだ!そうだ昨晩の事は無かった事にしよう。私は誰にも会わなかった。



しかし私には絶対無視できないルール、朝起きて最初にしなければならない儀式があった。

嫌だ!見たくない!見たら絶対今日一日のテンションはダダ下がり活動意欲が削がれるのは目に見えている。

私は手を前に突きだしたまま、「動かないで!ステイステイ!」と野良犬をしつけるように男に命じながらすり足で自分のカバンの元へ移動した。



自分の皮のトランクに目をやるとカギの番号を素早く合わせ開錠し、トランクの中に入っているノートの文字の記入されている最終ページを急いで開いた。



そこには


「男と酒を飲んだ。この男とこれから寝る。」


と書かれていた。



思わずノートを握る手に力が入り、買って間もないノートがヘシャゲ、ねじれるように変形した。

ワナワナと怒りが沸いてきてノートを勢いよく地面に叩きつけた。



「もぉあいつぅ!!何でいつもこうなの!!」と天井に向かって吠えた。



「まぁまぁリイゼちゃん。そんなに怒らず。まだチェックアウトまで時間があるから来なよ。」

と言って優男はベットに横になり左腕を伸ばし腕枕の姿勢を取った。

右手でベットの空いてるスペースをポンポンポンと叩き、添い寝を要求する。



「うるさい!私はリイゼじゃない!」と言って男の顔面目掛け鋭い中段蹴りをお見舞いした。

優男は蹴りの直撃は免れたが「うわ!!」と叫び声を上げ後方に回転し再びベットの下へと転げ落ちた。

「イテテ、乱暴な子だなぁ!」



私はベットを乗り越えて男を羽交い絞めにして立たせ、尻を蹴り部屋から追い出した。

「出てけ早く出てけ~!」その時に男の荷物も全部廊下に出してやった。

自分からお酒に誘っておいて、誘惑しお互いの合意があったのだとしたらヒドイ女である。

しかし私の行為は間違っていない!昨日の私とは一切関係ないのだ!と自分に言い聞かせた。



私はトランクから洋服を出し急いで着替えるとムズっとした顔のまま部屋を出た。

ドアを強く閉めた音で怒っているぞ!というのをアピールした。



出たすぐそこにすっかり着替え終わっている先ほどの男が壁にもたれた状態で待っていた。

少々困った顔をしている。

剣を携え身体の部分部分、肩や胸、腰に軽装備の鎧を身に付けた男は多少なりとも凛々しく見えた。

一応戦士のようだけど剣の手練れのようには見えない。やっぱり私のタイプではない。

私はジロリと男を一瞥するとフンと鼻を鳴らして。男を置き去りに速足で歩き始めた。

男は私の後を着いてきて、後姿をジロジロ見ていた。



「あれ~?服もまるっきり昨日と違うね?昨日の戦士風も格好良かったけど、やっぱりスカートを履くと女の子らしくなるよね!

そのエプロンも家政婦さんみたいでイイネ!下ろした髪も好きだなぁ。僕ぁ。」



「うるさい!着いて来ないで下さい!話掛けないで下さい!」

私は男を引き離そうと更に速足になった。



「待ってよリイゼちゃん!一緒に寝た仲じゃんかよ~。」



私はピタッと止まり真っ赤になった。振り向きざまに男に向かってトランクを振り回した。

「私はリイゼじゃない!寝たとか言うなぁ!」


「おっとっと」男は器用にトランクを避ける。私はムキになって更に激しく振り回した。

優男の癖にやたら避けるのが上手い全く当たらないので余計腹が立つ!


するとちょうど笑い声と共に部屋から出ようとしたタンクトップに短パンの屈強なスキンヘッド男の股間とみぞおちと顎にトランクの角が強打した。

男は顔の右側と右上半身にガッツリタトゥーが彫られいかにもヤバ気な雰囲気を醸し出している

屈強な男といえども鍛えようのない弱点3か所に強打を食らえばたまったものではない。

「ガ、ギ、グエ!」と三段活用のようにうめき声を上げ最後の顎への一撃で後方へ倒れ込んだ。


ゲゲゲ!私は青ざめた。


青くなっている私の背中から優男が「うわ~痛そ~」と他人事のようにのぞき込む。


すぐ後ろに待機していたこれまた全く同じ顔をした逆側にタトゥを入れた屈強なスキンヘッド男が倒れた男を指さし大爆笑していた。

「がはははは!ダッセェな!アニキ!女にのされてやがる!」

倒れたスキンヘッド男は腕で身体を起こし「おれのれぇ・・・。」と額に血管を浮かせ大爆発寸前の顔で「このアマァ・・・。」と睨んだ。

優男が私の手を引いて「逃げるぞ!」と言ってので「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」とスキンヘッド男に素早く3度頭を下げた。

そのまま速足で廊下の角を曲がり階段を下りる。



「許してくれたかな?」



「ああ、謝ったんだから、たぶん許してくれたよ!でも念の為この場を離れよう!」

私は優男に手を引かれたまま宿を出た。


「宿代は?」


「先払いだったからOKだ!」


「私出してないよね?ちゃんと払うから!」


「いいからいいから!それより君の名前リイゼじゃないなら何て名前なの?僕はジグ、それも覚えてないよね?」


「私は・・・。」と言いかけた時、宿から先ほどのスキンヘッド男が勢いよく飛び出して来た。


「ゴラァ!謝って済むかぁ!!」顔は完全にブチギレ理性を失っているようだった。


スキンヘッド男は巨体に似合わず素早い動きでこちらに向かって突進して来た。


「うわぁぁ!やっぱり謝っても無理な人だったぁ!」ジグと私は手を繋いだまま走り出した。

スキンヘッド男はすぐ後ろまで迫っていた。



急いで角を曲がる。正面は壁、行き止まりだった。

ジグは私の手を離し速度を上げると、右の壁正面の壁と素早く蹴り上げ軽やかに壁の上に飛び乗った。



へぇ?やるじゃん。と思わず私は思ってしまった。



ジグは「さあ」と言って私に手を差し出す。

一瞬私はその手を取ろうとして手を引っ込めた。

ちょっと考えて「やっぱり私黙って殴られるわ」と言った。



「え!?何言ってんだ!そんなのダメだ!あんな大男に殴られたら死ぬぞ!!」

ジグは必死に止めようとした。


「私が悪いんだもの!」そう言って私は振り返り壁に背を向けた。


「ワザとじゃないんだ!君は悪くないさ!それなら俺にも責任はある!」


「私が彼に怒りを覚えさせたのなら私の責任だわ!」


「マジかよ!」ジグは流石に困惑した。



スキンヘッド男が勢いよく角から飛び出し姿を現した。

「ゲ!来た!頼むから逃げてくれ!手に捕まって!」ジグの懇願に私は答えず壁に背を向けていた。



壁を登らずこちらを向いている私を見てスキンヘッド男は歩みを緩めた。

「どうやら観念したようだな!3発で勘弁してやるよ!」と肩を回しバキバキと鳴らした。

弁明する間も与えて貰えず男は再び勢いよく突進し、大きく腕を振りかぶった。

私は目を反らさず拳をジッと見ていた。



「まず一発ぅ!!」男は容赦なく私の顔面目掛けて大きな拳を突き出す!

パァン!という破裂音がしたかと思うと私の目の前にジグが立っていた。ジグがスキンヘッド男の拳を両手で受け止めていた。

「いやいや!君も大人げないな!流石に男の拳は割に合わないでしょ?殺してしまうぞ!」と痛みに顔をしかめながら言った。


「男も女も関係ねぇ!俺は身内の前で恥をかかされた!その重みの拳だ!」スキンヘッド男は拳を押し込む。


「女を殴って恥が帳消しになるのかい?上塗りだろう!それは!考え治せ!」


「うるせえ!」グググと拳に押されるジグ。


「ジグ!もういいから!私が殴られれば済むわ!」


「ダメだ!君は黙ってろよ!」私は思わずジグの迫力に押され言葉を詰まらせた。


「じゃあお前が100発殴られろ!!」男は再び拳を振り上げジグに襲い掛かる!


「それもゴメンだ!」とジグは後方にスウェーし拳を避ける!

「おらぁ!!」という怒号と共に連続で突き出された拳をジグは避けるイナす受け止める。

男の拳は全くジグの顔面を捕らえられず、益々大振りになる。

蹴りやヒザなども繰り出すが十数分後には息が上がり、腕が震え上がらない状態になっていた。



そこでジグはゆっくり腰の剣を抜き男の首元に当てがった。

「僕にも責任の一旦はある。謝るよ。悪かった許しては貰えないだろうか?」



「クソが!・・・チッ!貴様とはいずれ真剣で決着を付ける!そん時は殺す!」男はそう睨んで背を向け、去って行った。



「ふう!良かった・・・。何とか穏便に解決できたね。」

そう言ってジグが剣を収め振り返ると「ありがとう!ジグ!ステキ!」と言って少女は抱きついてきた。

そしてジグに濃厚なキスをしたのだった。



という展開を期待しジグは両手と唇を突き出し振り返ったのだが、そこに少女はいなかった。



「あれぇ!?」すぐ後ろにいたはずなのに?何処に行った?



「結構ステキだったわよジグ!」と声のする方に目をやると壁の上に少女が座っていた。

「また会いましょう!私はエルよ!」そう言って少女はスカートをひるがえし壁の向こうへ消えた。



ジグはポカンとしながらもドキドキとトキメキを覚えていた

「エルちゃんかぁ・・・。大男に黙って殴られようなんて何て無茶な子だ・・・そして何て真っすぐな子なんだ。」

昨日はリイゼって言ってたんだけどなぁ・・・酒を飲むと人格が変わるのかな?でもまた会ってくれる資格は得れたようだ。

よし!とジグは小さくガッツポーズをした。




宿場の朝、起きて直ぐ実行しなければならないルールの1つ目。目覚めたらまずノートを見る事。

トランクのカギを開け少しひしゃげたノートを開くと最終ページに

「男と酒を飲んだ。この男とこれから寝る。」と書かれたその後に


「やたらドラゴンに詳しいらしい人物がこの町の古書店にいるらしい。ウロボロスの情報を持っている可能性あり。」

と書かれていた。



追記で「軽々しく男と寝ようとするな!軽くみられる!そのおかげで体の片側にタトゥを入れたスキンヘッドの大男と何やかんやで揉めた!

2人組のスキンヘッド男に気を付けて!」と書かれてあった。



また酒飲んでやっちまったのか・・・。覚えてない・・・。と少女は頭をポリポリ掻いた。

それで何でスキンヘッド男と揉める事になったのかを知りたいわ・・・。おてんば娘め。



可愛らしいピンクでフリフリの寝間着を着た少女はパタンとノートを閉じ、トランクに押し込んだ。



「レッドドラゴンを見つけたければウロボロスを探す事じゃ!ウロボロスは世界を見通す!」



リイゼは育ての親である老婆の言葉を思い出していた。


ウロボロスを探せ・・・。


レッドドラゴンの目覚めは近い・・・目覚める前に探し出して叩く!!




リイゼは長い髪を束ねるとフードとマントで体を覆い宿を出た。


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