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公爵令嬢と社交界デビュー(7)

貴族たちへの挨拶回りは、退屈だった。

みな同じ事しか言わない。

トゥエラ公爵家の当主カティスや次期当主クラヴァンスの美しさを例えるなら、それは美しい赤い薔薇だ。王宮のような華やかな場所で、絢爛と咲き誇る赤い薔薇。

それになぞらえて、人々はリティシアを白い薔薇と褒め称えた。

それを、リティシアは冷めた気持ちで聞いていた。

リティシア自身、それなりに美しい事は自覚しているし、そうなるための努力も惜しまなかったので自信はある。が、父や兄と並べられるのはコンプレックスに感じてしまう。


母は、それはもう美しい人だったようだ。残念ながら姿似はないし、物心つく前になくなったので顔を覚えていない。

画家に書かせたものは、父がほとんど捨ててしまったらしい。誰一人として、母の美しさを描けた画家はいなかったそうだ。


あらかた挨拶を終えたところで、盛大なファンファーレが流れた。

それにあわせて王と王妃が入場してくる。後ろには王太子であるアルフォンスが妹姫のリリアナを伴っている。この国の貴族特有の金髪に、冴え渡る青い目をしている王太子は、父や兄ほどではないが美しい顔立ちをしている。妹姫は9歳とまだ幼いが、アルフォンス同様に金髪に青い目をしており、美しく育つであろう事が見受けられる。

(いい御身分だこと)

我が物顔で歩く王妃アンリエットには、正直いい感情を持っていない。

リティシアにとっては、デュークをないがしろにしているひどい義母だ。

幼いデュークを王太子から引き摺り下ろし、それでも飽き足らず周囲に、アルフォンスが王太子だと見せ付けているのだ。

デュークは騎士になって第二王位継承権を捨てたのにも関わらずだ。

更に、気に入らないことに父は彼女のお気に入りなのだ。

「まあ、カティス。お前が話していた娘というのはその者ですか」

そういって父に手を差し出す。

そうすると父は、王妃の手の甲にキスを落とすのだ。

それが見たくなくて、リティシアは深くお辞儀する。

「私の可愛いリティシアです。王妃様、どうぞよしなに。」


12時の鐘がなる前に、リティシアは王宮を離れた。王妃たちが現れてすぐに、デュークはいなくなってしまったし、これ以上いる意味もない。

結局、収穫という収穫はデュークと踊れたことだけで、次に会う約束もなにもできずに帰ることになったことが悔やまれる。しかし、一度の失敗で終わるはずもない。手はすでに打ってある。


帰りの馬車で、ふと王太子アルフォンスの意味ありげな目線を思い出す。

値踏みするような、冷たい嫌な目線だった。


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