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途中小説集  作者:
5/54

中庭の二人4:りっくんと笠音

未完成オムニバス、幼馴染編。

 校内の一階廊下、東側の大窓に、我が校自慢の広く美しい中庭がある。朝な夕な、その場所だけが他の生活空間から切り離された楽園のように、現実味のないものとして存在している。

 煉瓦模様のアスファルトの向こうに広がるのは、草原と呼ぶにふさわしい緑一色の広場。中心部にはぽっかりと大きな穴が開いており、そこに丸い形をしたプールのような水槽が埋め込まれている。常に透明な水が満ちているその中では、色とりどりの鯉が無数に泳いでいた。

 アスファルトと草原のちょうど境目のところには、古びた様相の朱色のベンチが置かれている。その向こう側に、二人の人間が向かい合っているのを見つけた。男女――それも、この学校の生徒だ。

 見つかってはまずいような気がして、わたしはとっさに窓枠の奥へ隠れた。ぽっこりと四角く飛び出た壁に、貼り付くようにして背中を預ける。

 何かを、話しているようだ。もしかして……告白、とか?

 確かにこの楽園、もとい中庭は、色恋のイベントを彩るのにうってつけのロマンチックな場所だ。まぁ、大窓から丸見えである故に、そのような行為を行おうという人はなかなかいないのだが。

 壁からそっと覗くようにして、様子をうかがう。そうして改めて二人をまじまじと見たわたしは、思わず声を上げそうになってしまった。

 何故なら、女の子はともかく……男の子の方に、見覚えがあったから。というか、有り体に言えばよく知っている人だったからだ。

 これはますます見つかっちゃまずいと思い、息を潜めて二人の話が終わるのを待つ。今すぐその場から立ち去ってしまえば手っ取り早かったのだが、そうしなかったのはやはりこの二人の行く末が気になって仕方なかったからだろう。

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