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卒業……大したことしてなかったけど

何というか繋ぎの話




 乙女ゲーム。

 所謂、ギャルゲーの逆転版。

 ゲームの主人公が女の子で、攻略対象は美形な方々。

 とどのつまり恋愛シュミレーションゲーム。

 前世でもまるで関係のなかった世界ジャンルの言葉だ。

 そんな世界だと言うことを知ったと言うか思い出したと言うか、反応に困る。

 姉の和が主人公なら、恐らく物語の開始は高校かそこら辺だろう。

 つまり、このネットで調べた情報を頼りにするとすれば私はサポートキャラ、もしくはライバルキャラと言うポジションに収まるだろう。


 …………………それにしても、だ。

 卒業式が終わり、特に何の未練もなく学校を後にしようとしたのだが、

「なんだでしょうか、これは」

「俗に言うラブレターと言う奴だろう。行くだけ行ってやれ、それ結構勇気いることだし、告白なんて学生の一大イベントなんだ」

 自宅に帰ろうと、百夏の下駄箱を見ると、ラブレターが入っていた。

「静流様、言葉遣いが戻ってしまっていますよ?それに私は、静流様のメイド…」

「恋愛は自由だ。それに、私は百夏の幸せを願っているんだ。ちょっとキュンとくるイベントかもしれないだろう」

「……静流様の口から『キュン』なんて単語が聞こえるとは思いませんでいた」

「そうか?一応、こんな見た目でも生物学上では女だg―――――なんだこれは!?」

 会話しながら、自分も下駄箱から靴を取り出そうとする際に武骨なしゃれっ気のない白い紙に『放課後、よろしければ屋上まで来てください。瑞樹幸平』と書かれ入っていた。

「あらあら、静流様にも春が訪れたのですね♪」

「いや、入れ間違いだろう。ほら私の下駄箱百夏の上だし」

 と言いながら、その紙を持ち上げちらりと裏面が見えてしまい、読んでみると『天白静流さんへ』と書かれていた。

「あれ、おかしいな、私は彼とまるで接点がないはずなんだが」

「えっと、彼いつも授業中熱い眼差しで静流様を見ておりましたが」

 …ナニソレコワイ

「よろしければ、と言うことは行かなくても構わないと言うことだろう?」

「先ほど静流様は私に『行くだけ行ってやれ、それ結構勇気いることだし』と言いましたよね?」

「ま、まぁ」

「ささ、待たせてはいけませんので私はちょっと桜の木の下へ行ってみますね。終わったら連絡ください」

「あ、おい、百夏!?」

 さっさと行ってしまう百夏。

 おーい、主を置いて使用人がどこへ行くんだー。

 はぁ、……………………これは、行くしかないのだろうか。

 手の中にある紙を弄りながらそうつぶやいた。




「ご、ごめん、天白さん。いろいろあって遅くなった」

 私が屋上に来て数分後、瑞樹がきた。

「で、なんの呼び出しでしょうか。大体予想はつきますが」

 そう言うと瑞樹は、私の近くにより、しっかりと目を見てこう言った。

「1年ほど前からあなたのことが好きでした!よろしければ付き合ってください!」

「ごめんなさい」

 彼は何処か当然か……と言いたげな表情をした。

「もしよかったらだけど、理由を利かせてもらえないかな?」

「そもそも、私とあなたは接点がないの。たまに交わすあいさつ程度。つまり、ろくに知らない人と付き合うなんて私には考えらないことなの」

 一目ぼれでも、だんだん話をしたり、仲良くなってからでないとまず無理。

 付き合って、この人の性格は無理だ、なんて曖昧で中途半端なことはしたくないから。

「それと、あなたと私は進学する方向も違うでしょう」

「確かに……俺は家の都合で私立、それも所謂お金持ち学校に進学することになってる。だから君には会えないかもしれないけど、この気持ちは絶対に変わらない自信はあるんだ!」

 ヱ?

「すみません、さっきなんて言いました?」

「この気持ちは絶対に変わらない自信はあるんだ!」

「その前です」

「お金持ち学校に進学」

「それです。まさかですが、『聖御朝学園』なんて言いませんよね」

 きっと今私のこめかみがぴくぴく動いているのだろう。

 何と言うか自分の体は無駄にハイスペックである。

「確かに俺は、聖御朝学園高等部に進学するけど………なんで、天白さんが―――まさか!?」

 嗚呼、何と言うかこれは“乙女ゲー的展開”と言うやつなのだろうか。

「ええ、私も聖御朝学園高等部に進学ですよ……」

「また同じ学校で通えるんだ……て、ええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?あ、天白さんの家もしかして……」

「それなりの企業です、どことは言いませんが」

 まぁ、かなり有名どころで自分で拉致される機会を増やしたくはない。

 これでも一度それが原因で植物状態に陥ってる訳ですし。

「……お友達になってもらっていいですか?」

「ええ、喜んで」

 



「どうでした、静流様」

「友達が一人できた」

「ええ!?『そこは彼氏ができた』じゃないんですか!」

「ろくに話したことがない人と付き合う気にはなれない。そもそも、そうゆう関係でいい加減なことはしたくないんだ」

「ふふふ、静流様は本当に乙女ですね」

「どういう意味だ?後、百夏はどうだったんだ?」

「どうでしょう、乙女の秘密です」

 中学最後の日の出来事。

 そして平凡な暮らしの最後でもあった。

次回ようやく高校生活スタート!

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