転校騒動 陽多視点
引き続き陽多視点でお送りします。
「転校ですか?」
隣で奏多が素っ頓狂な声を上げた。
よっぽど困惑してるのか口が半開きだ。
可愛い奴だななんて考えつつも、俺は正直キレかけていた。
「なんで今更、しかも聖桜学園だなんてよ」
何言ってやがんだ、と言いたくて堪らなかったけど相手は社長だ我慢した方が良い。
転校なんて冗談じゃないっての。
「俺ぜってぇヤだから」
俺はハッキリと拒絶一色だ。
転校なんかしたらまた一から人脈とか作らなくちゃなんねーから面倒だ。
俺が築いた平穏な学校生活を邪魔してほしくない。
奏多は可愛いんだから手ぇ出そうとする奴が現れるかもしれねぇ。
今までの高校では俺が睨みを利かせてたから、奏多に手ぇ出そうとする奴はほとんど居なかった。
まぁ手ぇ出そうとした奴は片っ端からシメてやったから今じゃ俺が怖いのか誰も奏多に近づこうとはしない。
俺の努力の賜物だよな!
でも聖桜学園では睨みを利かせるのは無理だろう。
もし利かせられても学園内に利かせるには相当な時間がかかるだろうから、奏多の安全を考えるとこの案はナシっつーことになる。
しかも権力を振りかざす奴らばかりだと思うから、ムカついても暴力でねじ伏せるのは後が怖そうだしな。
奏多は基本暴力が苦手だから物騒なとこはあんまり見せたくないのが本音だったりする。
「奏多もヤだよな!」
奏多に問いかけるも反応はあまり芳しくない。
奏多は転校することについてはあまり頓着しないみたいだ。
たぶん転校することになるんだろうと予想を立てながら思案する。
どうしたら奏多に近づく野郎を潰せるんだろ。
ケンカ以外での解決だからちょっと難しい。
転校するなら俺が張り付いて居られることが最低条件だ。
これだけは譲れない。
奏多に群がる男共を想像しただけで殺したくなる。
だから俺が周りで守ってやるんだ!
[ずっと一緒]これが約束できないなら転校の話はなしでって言おうとすると遮るように社長が喚く。
「でもでもでも、もう手続きしちゃいマシタ~。
だからおとなしく転校しなはれっ」
「はぁぁぁぁぁ」
と俺は今世紀最大の絶叫を上げた。
「おいオッサン、てめぇマジで言ってんのか」
マジギレ一歩手前。血管が切れる一歩手前だ。
思わず死んでこいって怒鳴りたくなった。
でも怒鳴ったら奏多が怯えるかもしれないから我慢。
「社長、そういうことは本人たちに確認を取ってからすべきです?」
奏多は一件冷静そうに見えるけど、これはかなり怒ってる時の雰囲気だ。
室温が2・3℃は下がった気がする。
奏多は怒るとマジこぇーんだよな!
背中に吹雪が見えたりする。
笑顔で怒るからより一層怖く見えんだよなぁ。
奏多を怒らせるのだけは避けたいって改めて思う。
まぁ、奏多がマジギレすることはほとんど無い。
少しのことじゃ文句は言ってもキレはしない。
可愛いうえに結構扱いやすい奴なんだぜ。
俺達の説教、おもに奏多の説教が終わりかけた時それは起こった。
「異論は認めませぇん、社長命令ですぅ~」
あのヤロー見た目よりも素早いな、と感心している間に社長は脱兎の如く走り去って行った。
「マジか…ありえねぇ」
俺はショックすぎて思わず机に突っ伏した。
本気で奏多に近づく野郎を潰す案を考えなきゃなー。
「何かあったら相談してよ?」
奏多はそう言って気遣わしげに頭を撫でてくる。
撫でてもらうのは好きだ、気持ちいいからな!
もしかして俺の考えがぽろっと口から出てたのかもしんねぇ、今後は気を付けようと思う。
この時俺は奏多に変な野郎が纏わりつくを許さず守り抜くと妙な誓いを立てた。
その夜俺が奏多の周辺警護の計画を企てていた。
あんまりいい案は浮かばなかったけど何とか乗り越えてみせる!
でもその計画がほとんど機能しないことを知るのはまた後日の話。
こうして転校することが決まったワケだが…
俺は奏多が心配で堪らない!