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転校騒動

「転校ですか?」

思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。

いきなり突拍子もないことを言われていささか気が動転しているようだ。


所長からの呼び出しがあって爆弾を落とされたのはついさっきのこと。

爆弾とはつまり先ほど私が間抜けた声を上げた“転校”という話題についてだ。


「なんで今更、しかも聖桜学園(しょうおうがくえん)だなんてよ」

陽多も訝しげに問うている。顔に何言ってんだとありありと書いている。


話しの顛末はこうだ。

私たちが通っている公立高校が転校を進めてきたのである。

理由は、欠席や早退が多くこのままでは進級でしないかららしい。

決して成績が悪いわけでない!もう一度言う成績が悪いわけではない!!

そこで芸能人や令嬢令息が通うような学校への転校を打診してきた。

そういう学校は仕事関係への配慮が十分されていて、仕事がらみの欠席や早退を課題などを出す代わりに免除してくれるのだ。

しかし普通の公立高校ではどんなに成績が良くても、授業日数が大事らしいから免除は到底無理なんだそうだ。

そこで白羽の矢が立ったのが聖桜学園だ。

聖桜学園とは、いわゆる有名なセレブな私立高校だ。

御曹司から始まり、俳優や華道・茶道の家元、政治家の子息はたまた外国の皇族などもいたりする。

さまざまな分野の人間が入り混じっているらしい。

セキリュティーもばっちりで生徒の行動は生徒証で管理されているとかなんとか。

そんな学校に転校しないかという相談だったワケで冒頭に戻る。


「俺ぜってぇヤだから」

陽多ははっきり拒絶の色を示した。

私も正直あまり乗り気ではない、一応今の高校にも友達が居るから。

時期も中途半端だし新しい友達が出来るか不安でたまらない。

ちなみに今は4月の終わりだったりする。

転校するなら5月の初めになるから親睦会とかもないだろう。

内弁慶な私は友達ができるかどうか怪しいところである。

陽多は社交的だしすぐ友達できそうだなー。と呑気に考えていると「奏多もヤだよな!」と私に詰め寄ってきた。

友達が少なすぎる私と違って陽多は友達多いからその分離れがたいのかもしれない。

「せっかく今の高校で奏多に手ぇ出そうとする奴等を潰せたのに、転校なんかしたら水の泡じゃねぇか!」

隣で陽多が何やらぶつぶつ言っているけどよく分からないからあえてのスルー。

でも学校で何かを頑張っていたらしい、頑張ることは良いことだ。後で褒めてあげよう。

「でもでもでも、もう手続きしちゃいマシタ~。

だからおとなしく転校しなはれっ」

社長がピースをしながらまたもや爆弾を投下。

「え~~~~~」

「はぁぁぁぁぁ」

二人の絶叫が響き渡った。


「おいオッサン、でめぇマジで言ってんのか」

青筋を浮かべながら頬をひくひくさせて陽多は激昂していた。

いっぺん死んでこいと顔に描いてある。

怖っ!ていうか社長にオッサンはまずいでしょ!

私は思わずツッコみを入れていた。

「社長、そういうことは本人たちに確認を取ってからすべきです」

思わずツッコんでいた私だけどフツーに怒ってますからね。

私たちにこんこんと文句を言われ続けた社長は

「異論は認めませぇん、社長命令ですぅ~」

と叫ぶと尚も楽しそうに脱兎のごとく逃げて行った。


「マジか…ありえねぇ」

陽多はショックが大きすぎたようで机に突っ伏してうなだれていた。

もはや私もため息をつくしかない。

「また一からやり直しかよ…大事な奏多の為とはいえめんどくせぇな」

「どうかしたの?」

また一人でぶつぶつ言い出した陽多に声をかけると慌てたように顔を上げると苦笑を浮かべた。

「なんでもねぇよ」

「そう?何かあったら相談してよ?」

私はうなだれている陽多の頭をぽんぽんと撫でてあげた。


「お前に言えたら苦労しねぇよ」

私がぼそりと呟かれた言葉に気づくことはなかった。



「奏多に変な野郎ムシが近づかねぇようにしねーとな」

その夜、陽多が奏多の身辺を見張る計画を企てていたのは言うまでもない。


そして、陽多の企てを私が知るのはとうぶん先の話である。






陽多がシスコン過ぎるような気が…

次は陽多視点で書こうと思います。


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