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お題『眼鏡』

「そうね、例えば疲れてふと書類から顔を上げてから、眼鏡だけ少し上にずらして目頭を揉んでるところとか」

「…………」

「眼鏡の位置を直してすぐ、曇りに気づいて拭くために外す時の不本意そうな表情と首を振る仕草とか」

「はあ……」

「考えごとをしながら無意味に珈琲の湯気でレンズを曇らせているところとか。もっとあるのよ、好きなところ。そうね例えば──」

「あの、さっきから聞いているとどうもやはり君は、眼鏡が好きというよりも眼鏡に付随する別の何かに執着があるように思えるのですが……」

「そりゃそうよ、先生がかけているんじゃなきゃ眼鏡自体はどーでもいいって思ってるもの」

「おかしいですね、先ほどは『眼鏡が好きだからコンタクトにはしないでくれ』と言っていたように思うのですが」

「だから、好きなのは『眼鏡』じゃなくて『眼鏡をかけている先生』よ。私は無機物に欲情するほど節操なしじゃないわ」

「よく……わかりません。君はふたりきりの時は必ず眼鏡を外させたがるから、てっきり似合っていないのか眼鏡がお嫌いなのかと思ったんですが」

「眼鏡は好きよ。大好き。だってその薄いレンズ一枚で、先生は世の中に完全な防御をしいているでしょ。弱くて、強くて、礼儀正しくて素敵よ。いつだって毟り取って素顔に噛み付きたいって思っちゃう」

「……君の主張は理解できないものが多いですが、今日のはとびきりだ。結局かけさせたいのですか、かけていて欲しくないのですか?」

「かけてて欲しいの。世間からも他人からも全力で自分を守っていて欲しい。そうして、私のことだけ完全に遮らずに全て受け入れて欲しいわ。弱さをさらけだした貴方をあますところなく征服したい」

「なんでそう、君の恋情は攻撃的なんでしょうね……。僕はもう少し、穏やかに優しい関係を望んでいたのですが」

「ガラス越しの予想なんて外れるのが当然よ。本物はもっと熱くてエグいの。ねえ、ところで早く外してくれない? 抵抗するだけ無駄なんだから、早く諦めて」

「たかが眼鏡を外すのが、服を脱ぐより恥ずかしいと思う日が来るとは思いませんでしたよ。まったく……」

ずるして会話のみで失礼しました。

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