謎に溺れる
神村紗智子の後輩二人のらぶえっち。
R15です。苦手な方は回避でお願いします。
瑞希がぽつんと口づけを落としたそこから、じんわりとぬくもりと同時に快感が広がって、瑛一は熱い息を吐いた。
ベッドの中での瑞希は別人だと瑛一は思う。
普段の瑞希は、本当にサバサバしていて潤いというものを捨て去っている。
男友達とほぼ同格だ。
大きな口を開けて笑い、怒り、時には泣く。
泣き顔すら男っぽいと思うときがある。
そもそも瑞希の髪型がよくない。
もう陸上部も引退したんだし、髪を伸ばしてもいいじゃないか。
いや、現役の時だって長いままの先輩だっていた。あの、神村先輩なんか背中まで伸ばしていたんだし。
でも、瑞希は頑なにショートカット。しかも一部男子にはサルと揶揄されるほどのベリーショート。
そりゃ、猫目がキュートな彼女に似合っているし。おかしくはないけれど。
彼氏としては、可愛い彼女にもっと可愛くあって欲しかったりする本音がどこかあったりする訳で。
だが、そんな普段の不満がベッドの中では逆位相に変化する。
中性的な容姿が、ほんのり色づいていく様はなんとも艶かしい。
細くしなやかな体躯。
日焼けした四肢と抜けるように白い体幹部のコントラスト、皮膚の下で蠢く筋肉の陰影。
瑛一が優しく接すれば蕩けそうな表情になり、激しく寄せれば眉根に皺を寄せ快楽と苦痛に耐える表情になる。
瑛一は瑞希が初めてではないのだが、これほどまでに夢中になった女は他にいない。
溺れる──と思う。
瑞希がその瞳を煌めかせ、瑛一を嬲る。
立ち上る陽炎のような楽に思わず声を上げる。
熱い。柔らかい。溶ける。
思わず引き寄せ口づけを乞う。
舌を絡め合わせ、歯列をなぞり、互いの咥内を探り合う。
ああ、口づけすら甘い。
瑞希の瞳は多弁だ。その琥珀色の瞳の奥で何を見ているのだろう?
その答えを知りたくて、今日も肌を合わせる。
受験生──参考書と問題集は机の上で広げたまま。
数学よりも古文よりも化学よりも深遠な謎、なんてたまにはそんなメランコリックな台詞を吐いてみたくなったりして。
瑛一は微笑みながら、その短い髪の間に指を通して額に口づける。
蕩けた表情のまま瑞希は微かに身じろぎ、ちゅるりと水音を立てながら瑛一の唇を舐めた。
「もっと、ちょうだい」
琥珀色の瞳が揺らぐ。
「何を?」
耳朶を優しく甘咬みし、言葉を落とす。
「ぜんぶ」
貪欲ないらえに、瑛一は笑みを浮かべる。
瑞希を女にしたのは自分。こんな謎を秘めていたなんて誰も知らなかったのだ。
一生俺だけしか知らないままでいればいい。
ゆらゆらと揺らめく白。激しく蠢く褐色。
謎を掛ける琥珀。
そして、至る所に見え隠れする薄紅。
溺れ、上昇し、そして弾けた後の沈黙──
静かに退いていく波に、瑛一は目を瞑る。
ベッドの中だけの瑞希も眠りにつく。
そしてまた、気楽な男友達もどきが瑛一の背を叩くのだ。
「早く起きて勉強しよう!」
なんだよ? もう少しいいじゃないか、余韻に浸らせてくれよ。
つうか、余韻に浸りたがるのは普通女の方じゃないのか?
なんだよ、この変わり身の早さ。さっきまでどこの娼婦か人魚か魔女かってぐらいの色っぽさだったのに。
もうさっさと服着ちゃってるし。シャワーもなしかよ?
瑛一はむーっとした顔で頭をぐしゃぐしゃ掻き回す。
男女逆転してないか? 俺たち。
のそのそとボクサーパンツを履き、Tシャツを被る。
「俺のこと、ホントに好き?」
ああ情けないと思いつつ、ついつい恨めしい言葉を投げかけると、瑞希はその瞳を煌めかせる。
その表情に見覚えがあった──と思ったら。
唇にふわりと乗ったぬくもり。
「アタリマエデショ?」
その言葉が一瞬変換出来なくて、瑛一は少し焦る。
ふふんと笑う瑞希。
謎は眠りについたのではなく、奥底に戻っていただけでやはりそこにあるのだと気づいたら、愛しさが溢れた。
やっぱり俺は瑞希に溺れてる、と瑛一は思う。
- FIN -




