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混沌の魔法師  作者: 鈴樹 凛
第1章 謎の幻獣使い
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第4話~話し合い~

 ゼロ達は放課後、生徒会室に向かっていた。

「何か緊張してきたな」

「そうよね……あたしも緊張してきたかも」

「武者震い?」

《リリーちゃんそれ意味が違うよ……》

《人間をちゃん付けとは、堕ちたなウリア》

《たまには良いじゃん。それにリリーちゃん可愛いし》

《……もう呆れてものも言えん》

 そこにリーガンが茶々を入れる。

「前から思ってたけどさ、お前らめちゃくちゃ仲良いよな」

《良くない!》

《良いよ~》

 まったく同時の発言だった。

「ガイアってば、そんなに息ピッタリじゃ全然説得力ないよ」

 ゼロが苦笑しながらいうと、

《むぅ……》

 不服そうだった。そんな感じの話をしているとあっという間に生徒会室に到着した。

 生徒会室の重厚そうなドアを2回軽くノックすると、

「どうぞ、遠慮せずに入って」

 というセリカの声が聞こえたので入室すると先客がいた。

 綺麗な銀の髪をの真っ直ぐ腰まで流しており、色白な顔の造形は驚くほど整っている。平均的な胸にしなやかな肢体はまるでモデルに様だ。

 こちらの視線に気づいたのか、わざわざ席から立ち上がり一礼してくる。その様子が過去の姿と重なって、ゼロは思わず見惚れてしまった。

《ゼロよ、どうかしたのか?》

《ホント、ボ~ってしてたけどあの娘がどうかしたの?》

 その念話を聞いてリーガンが野次を飛ばしてきた。

「もしかしてゼロ君は惚れちゃったのかな?」

「え~! ゼロ君ってば、ああいう娘が好みなの? (すっごい強敵だよ……)」

「ゼロはああいう髪型が好み? (ツインテールやめようかな……)」

 便乗してか、ミリアリアとリリーまでからかっていた。

「あの~、私達のこと忘れてないかしら……」

「……そんなことありませんよ、ははは……」

 図星を突かれてゼロは苦笑いした。

「……まあ良いわ。まだ当事者が全員揃ってないし。他の役員の紹介もその時するわね」

 疑いの眼差しを向けられてヒヤッとしたが、スルーしてくれたようだ。言われるまで意識していなかったが、生徒会室にはセリカの他にも昼休みの時にいた二人がいた。

「お前がゼロ・イシュタールか。昼休みの時はごたごたしていた話す時間がなかったな」

「お、お噂はかねがね……」

(一体何の噂だ?)

「イシュタール、お前に一つ尋ねたいことが……」

 男子生徒の言葉は、突然の来訪者によって最後まで続けられることはなかった。

「待たせたな! Aクラスのジオ・ライガーだ。早速ゼロ・イシュタールの処罰について話し合おうか!」

 その背後では、ギルドとガルドの二人がオロオロとしている。突然の事に頭がついて行かないのだろう。ゼロ達は少し同情の念を覚えた。

「無礼でしょう! 一体ここを何処だと思っているのですか!?」

「へっ……」

 突然、今の今まで気弱そうにしていたエルフの彼女が怒鳴った。

「ここは聖アストラル学院生徒会室ですよ! ライガー伯爵家のご子息なら、遵守すべき規則は守りなさい!」

「クッッ……」

 二の句が継げないようだ。が、そこでその雰囲気を払拭するようにセリカが口頭を切った。

「ふぅ……ようやく当事者全員が揃いましたね。それでは皆さんで自己紹介をしましょう。まず私からですね。生徒会会長で2年S組のセリカ・シュタインです」

 あの三人組が来た途端、口調と態度が改まった。あれがセリカの被る生徒会長としての仮面なのだろう。

「自分は、風紀委員長で3年S組のダリア・ウォジュレットだ。よろしく頼む」

「わ、私は生徒会副会長で2年A組のアン・リンスレットです」

(先程の気迫嘘みたいだ…)

 と思いながらも話の流れを引き継ぎ、

「僕は1年E組のゼロ・イシュタールです。そして両肩にいるのが、光竜のガイアと鳳凰のウリアです」

《我がガイアだ》

《僕がウリアだよ~》

「俺は1年E組リーガン・ギュンターです」

「あたしは1年E組のミリアリア・スレインです」

「……私は1年E組のリリー・ワンダー」

「仕方ないな。もう一度名乗ってやるか!」

 そう前置きするとアンにじろりと睨まれていた。その鋭い眼光にたじろぎながら言った。

「俺は1年A組のジオ・ライガーだ」

「俺は1年B組のギルド・ルージンだ」

「俺は1年B組のガルド・ルージンだ」

 そして、残った最後の一人に視線が集まった。彼女は何の気負いも無く言った。

「私は1年S組のリーナ・ランカスターと申します。今度ともよろしくお願いします」

 という流れで自己紹介は何事もなく終わったのだった。


     *****


「それでは、昼休みの騒ぎに対する生徒会の意向をお知らせします」

「ちょっと待てよ! そこの生意気な幻獣使いの処罰はこの時間に話し合うんじゃないのかよ!?」

「本人達の前で話をするわけがないでしょう。確かに放課後とは言いましたが、私が話をするのは風紀委員長と副会長だけです。それに、あなたも処罰の対象ですよ?」

「な……僕は被害者だぞ! 何で僕が罰を受けなきゃならないんだ!?」

「今更ですか……元はと言えばあなたが今回の騒動の元凶でしょう」

「ぐ……糞が!!」

「生徒会室での下品な言動は私が許しません」

 アンが有無を言わさぬ絶対零度の視線と声音で告げた。それに怖気づいたのか、傍目にも可哀想に思えるほどジオはすっかり小さくなっていた。

「それでは繰り返しますが、生徒会の意向をお知らせします」

 その言葉に処罰を待つ者は気を締め直した。

「我が生徒会はゼロ・イシュタールとジオ・ライガーに真剣勝負を所望します」

 その場が驚愕に包まれた。

《それは良い! ゼロの力を愚民共に知らしめる良い機会だ!》

《そうだよ! そうすれば誰かさんがゼロを侮辱することもなくなるしねぇ……》

 二人の言葉を無視してゼロが尋ねた。

「どういうことですか? 彼と僕では勝負にならないと思いますが…」

「そ、そうだ。こいつと僕では力の差がありすぎる。それは無謀というものだ!」

「それはやってみないと分からないだろう?それとも、お前はイシュタールが怖いのか?」

 ダリアが不敵な笑みを浮かべて挑発した。

「な、そんなことはない! やるだけ無駄だと思ったからだ!」

「なら何も問題はないだろう? お前には何のデメリットもないんだから。逆に考えてみろ。うまく事が運べばお前は謎の幻獣使いを倒した初の男として学院で高く評価されるだろう。ライガー伯爵もさぞかし鼻が高いだろうな」

「……成程。くくくはっはっはっはっ!良いだろう、この勝負受けてやる!」

 先程までの口先が嘘の様に調子に乗り出した。

 そして、ゼロに挑発的な視線を投げ掛けた。

「お前はどうするんだ? まさか、逃げる気ではないだろうな!?」

「……」

 ゼロは何も答えなかった。

「どうした、怖気づいたのか!所詮はE組の落ちこぼれということ……」

 が、ジオの言葉は最後まで続かなかった。

 否、最後まで続けられなかった。

《屑が……調子に乗るなよ》

《本当だよ。自分の立場が全然分かってないなんて……ある意味幸せな屑だよ》

 部屋の温度が二匹を中心に上がっていた。

「二人共落ち着いて」

 ゼロが注意すると、二人は無意識に発動していた魔法を解除した。

「分かりました。その勝負受けます」

「良いのですか?」

 今の今まで我関せずといった体を取っていたリーナが言った。ただゼロだけは、その言葉の真意を悟っていた。

「はい、構いません。いずれ分かっていたことです」

「そうですか……分かりました」

 リーナは、何故か思慮深げに答えた。

「はっ!せいぜい無様な姿を晒さないようにするんだな!」

「そうですね。胸をお借りします」

「それでは、お二人の勝負は明日の放課後第3アリーナで行いましょう。これで、ひとまずこの件は終了とします」

 話が終わったようなので席を立とうとすると、

「あ、ライガーさんとルージン御兄弟だけで結構です。他の方々は残って下さい」

「なっ! どうしてこいつらだけなんだ!」

「あなた方とはもう話し合う必要がないからです」

「こいつらには用があるってか!」

「はい。さっきからそう言っているではありませんか?」

「ちっ!」

 盛大な舌打ちをし、最後にゼロを一瞥した後、ルージン兄弟を引き連れて生徒会室を後にした。

「それで、俺らに一体何の用ですか?」

 リーガンがゼロ達を代表して言った。

「単刀直入に言います。この学院では、入試の結果の改竄が行われています。ランカスターさん以外の皆さんはその被害者なのです」

 この場にいる者の殆どが驚愕に言葉を失った。


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