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生存率1/2のサバイバル

「おい、アレやろうぜ」

クラス一のデブ、直木太志が言った

「俺今日あんま金持ってないんだが」

日ごろからクールを気取っている天パ野郎、中村希が答えた

「まあ僕はどうせまた勝つから別にいいけど」

希の背後からオタク野郎、中島田熊が割り込む

「よーし、薄井、お前は?」

直木が俺に尋ねた

「ふん、いいだろう」

俺の名は薄井直哉

長身に爽やか短髪、元野球部エースの男子高校生だ

おっと、そんなことよりも「アレ」とやらの説明をしないとな

まあ簡単に説明するとパシリゲームみたいなものさ

ジャンケンをして一番負けのやつが他の奴の注文したものを自腹で買いに行く

悪魔のようなゲームだがこいつらはギャンブルに賭ける青春も悪くないって輩ばかりなのさ

言っておくが俺と田熊は一度も負けたことがない

つまりは勝率100パーセントってわけだ

希もなかなかの強運の持ち主らしく数えるほどしか負けたことがない

特筆すべきなのは太志だ

コイツが勝った時は食費が洒落にならんから地獄をみるが大体この勝負で負けるのはいつもコイツなのだ

自分の食費を浮かせるために言いだすわけだがいつも負けてばかりで結局は金銭的な面から自分の食事を減らしている

ダイエットとか言っているがただのアホだと俺は確信している

「さーて、始めるか」

太志が席を立ち俺たちもそれに続き立ち上がる

全員が立ち上がりやる気が感じられたところで希が言った

「んじゃいくぞ」

それぞれが構える

「じゃんけんぽん!」

田熊の掛け声と同時に俺たちは一斉にそれぞれの拳を振った

結果は・・・

太志がグー

希がグー

田熊がパー

俺がグー

「やったね」

田熊が嬉しそうにメモを取り出し注文を書きつける

「まーたお前は勝つのか」

呆れ顔の太志が言った

「次は俺さ」

希がしゃしゃる

「ふん、勝負はこれからだ」

俺は相手の二人を睨みつけると掛け声をかけた

「じゃんけんぽん!」

俺たちは優越感に浸っている田熊を尻目に拳を振った

結果は・・・

太志がグー

希がチョキ

俺がチョキ

「いよっしゃああああああああああああああああ!!!!」

太志がガッツポーズを掲げ叫ぶ

クラスの他の奴の視線が痛い

「んじゃこれよろしっく」

太志がメモを取り出す

「おいおい何だその厚さは・・・」

希の顔が引きつる

「何って注文のメモだけど」

太志が当たり前の返答をする

「ほら早く早く」

田熊が次の勝負をせかす

「オーケー、やってやろうじゃん」

希の目がギラリと輝く

「先に言っておく、俺の注文はビッグマーベラスカツサンドとジパング風フレンチフライのサイズLにミルクティーダージリンセレクションボリューム3だ」

俺は希に注文を突き付けた

「俺がそれを聞く必要はない」

希はそういうと構えた

「「いくぞ!!」」

俺たちはそう叫ぶと振りかぶった

「じゃんけんぽん!!」

俺と希は同時に拳を相手の前に突き付けた

結果は・・・

希がパー

俺がパー

あいこだ

「ハァ・・・ハァ・・・やるじゃん」

あまりの緊迫感に息を切らした希が言った

「ふん、前のお前ではないようだな」

俺も思わず片膝をつく

「やっぱカレーだけじゃなくてカレーうどんも頼もう」

それを尻目に太志が注文を書き足す

「おいおい、一体いくらになるんだよ」

田熊も呆れ顔だ

ん?

ふと尻ポケットに手をやった俺は違和感を覚えた

そこにはあるはずの物がないのだ

普段から鞄にはしまわないからここにあるはずなのだが

そう言えば昨日放課後にコンビニで菓子を買ったな

そのあとは直帰してすぐに寝たはずだが

はっ!

そう言えば菓子買ったときに財布をそのまま菓子を入れてもらったビニール袋の中に一緒に入れたんだ!

そしてその菓子は今も自宅の机の上だ

これはまずい

今の俺は一文無しというわけか・・・

これがバレたら何を言われるか・・・

それにいまさら引くことも出来ない・・・

どうする・・・俺

「どうした?手が震えているようだが」

希が笑みを浮かべている

「武者震いってやつさ」

そう答えた俺は思った

解決法は一つ

勝てばいい

それ以外の選択肢は俺にはない

勝利以外の選択肢は俺には似合わない

ここは少し慎重に行かせてもらうとしよう

希の一手目はグーだ

そしてニ手目はチョキ

三手目がパー

偶然にも俺が出した手と全てかぶっている

ジャンケンの手の順番と言えば童謡でも歌われているようにグーチョキパーが一般的な順番だろう

希はそれにあやかっているのだろうか

少なくとも俺はまったくの偶然でこの手になったわけだが

ふむ、探りを入れてみるか

「お前・・・次何だす?」

「は?」

俺の問いに希は驚いたようだった

「んーじゃあグー」

希は疑うような目で俺を見据えると答えた

やはりな

希は順番で手を出しているようだ

そして次もグーを出すと宣言した

だが、これは奴が正直者だったらの話だ

騙し騙され、死ぬか生きるかのこの世界

それはまずないだろう

やつはチョキかパーを出す

そして先ほどあいこになったであろうパーを再び出す可能性は低い

つまり俺がグーを出せばチョキを出した希に勝てるわけだ

だがパーを出される可能性がゼロというわけではない

そこで俺は奴がパーを出す可能性をゼロにする一言を言うんだ

「天パだからパー出すかと思ったわ、天パのパー」

俺は挑発するように希に言った

「寝言は勝ってからいいな」

少し勘に触ったのかぶっきらぼうな口調になった希が言った

「んじゃあ、いくか?」

俺たちは再び構えた

「じゃんけん・・・ぽん!!」

俺は野球のボールを投げる時のように手首のスナップを利かせ華麗にグーを出した

結果は・・・

希がグー

俺がグー

再びあいこだ

な・・・なんだと・・・?

こいつ・・俺の予想の範囲を超えてやがる・・・

まさかここで馬鹿正直にグーを出してくるとは・・・

この俺としたことが裏を読まれたか・・・

「ふう、あぶねー」

希が額の汗をぬぐう

「はやくしろよ!腹減ってんだよ!」

太志が叫ぶ

「昼休みはそう長くないよ」

田熊もしびれを切らしているようだ

落ち着け、落ち着くんだ薄井直哉

周りからの雑念に惑わされるな

俺は深呼吸をすると目を閉じ再び考えた

じゃんけんの勝率は二分の一だ

あいこはカウントされないとして、勝つか負けるか、それだけだ

奴は・・・希はグー、チョキ、パー、グーの順番で出してきている

ほぼ確実に奴は順番で手を出してきているに違いないのだ

次はチョキを出すだろう

俺が次にグーをだせばそれで勝ちだ

確率で言うと

グーが20パーセント

チョキが60パーセント

パーが20パーセント

といったところだろう

だがどうだ

先ほどのように俺の予想を反した行動をとることだできるのだ、こいつは

さっきの勝負、俺の挑発は成功したといっていいだろう

再び奴を挑発すればパーを出す可能性は皆無になる

しかしそのパーの可能性がチョキにプラスされるのかそれともグーにプラスされるのか何パーセントプラスされるのか俺にはわからない

そして考えておかなければならないのはもしかしたら二度目は通用しないかもということだ

勝敗的に考えてみると奴はグーを最もだしそのすべてであいこになっている

このことは奴も考えているはずだ

奴にとってのグーはあいこの手だ

この手を再び出してくるとは考えにくい

よってグーを出す可能性は順番と合わさり最も低くなるだろう

そして俺は今のところやつと全ての手がかぶっている

つまりグーは俺にとってもあいこの手なわけだ

奴がもしこのこれらのことを理解しているならばグーでは来ないはずだしチョキかパーを出すはずだ

俺は奴の裏を行くがその裏に奴は行った

そこで俺は慎重に負けがない手を出すことにした

ズバリチョキ!

順番的に奴が最も出す確率の高いチョキで来たとしてもその次に確率の高いパーで来たとしても俺の負けはない

くくく・・・

この勝負貰った!

俺は溢れ出る笑みを必死でこらえならが希を見た

奴は腕を組みながら悩んでいるようだった

そうだ悩め!

チョキかパーを出すかでな!

お前は俺の手の中で踊ってるのさ!

希は俺の視線に気づいたのかこちらを見るといった

「決めたぜ」

「ほう」

俺は奴に余裕すら感じられ少しばかりの驚きを感じた

しかし、それが大きければ大きいほど奴の落胆も大きくなるはずだ

それを見るのが楽しみだぜ

「すぅ・・・」

俺は息を吸いこんだ

「いくぞ!!!」

そして拳を天に向け叫んだ

「くるあああああああ!!!」

希はそう叫ぶと飛び上がった

「「じゃん!」」

二人の視線がぶつかる!

その間には誰も侵入することはできない!

そこはまるで他の全てが無になったような二人だけの空間だった!

「「けん!!」」

希が拳を振り上げ俺は力の限り振りかぶる!

これで・・・この勝負で勝敗が決まる!

俺はそう確信し希の目からも奴がそう確信したことが感じ取れた!

そして・・・時はきた!

「「ぽんっっっ!!!」」

希が着地と同時に拳を振り下ろす!

それに呼応するように俺の拳がかざされた!

結果は・・・

希がグー

俺がチョキ

負けた

「なっあっ・・・」

俺は目の前の光景が信じられなかった

思わず膝から崩れ落ちる

「よっしゃーじゃあ俺はもずくラーメンな」

希が生き生きとメモに注文を書きつける

「なぜ・・・んだ・・・」

「ん?」

3人が振り向く

「なぜなんだ!!!」

俺は力の限り叫んでいた

教室中の視線が天を仰ぐ俺に集中する

「お前グーチョキパーの順番で出してたろ、まじわかりやしー」

そういって希は笑った

俺は・・・燃え尽きた

「なるべく早くなー」

「1つでも忘れたら承知しねーぞ早く行け!」

「伸びる前に頼むぜ」

俺は3人からの声に背中を押され教室を出た

そしてそのまま帰宅した俺への扱いが翌日から見るも無残な物になったことは言うまでもない




END

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです 読みやすかったです [一言] じゃんけんでこんなに面白い作品が書けるとは・・・。 すごいですw
2011/01/24 16:28 退会済み
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