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お酒が飲める云々よりも

掲載日:2026/04/24

15分短編です

 二十二時半を過ぎたころ、課題を進める俺の部屋のチャイムが鳴った。彼女だ。今日は仕事の後に飲み会があると言っていたけど、それにしては早い。社会人の飲み会って存外早く終わるんだなぁ。

「たぁだいまぁぁ~!!」

 ドアを開けると、べろべろに酔っぱらった彼女が入ってきた。案の定酒臭い。

「いらっしゃい、早いと思ったけど、結構飲んだ?」

「んん~、どうだろぉ~、ハゲとぉ、お局様が居なかったからぁ、めっちゃ楽しかったのは覚えてる~!」

 よくウチまで来られたなぁと言いたくなるほど、酔っぱらっている。ここまで酔っているのは久しぶりだ。

「よかったね、お水飲む?」

 大学生の狭いワンルームだから、おしゃれなソファなんてものはない。ベッドに座ってもらって、コップに水を入れて持ってきた。

「んふふ~ありがとぉ~!!」

 彼女は、日本酒を飲むような仕草で水を飲む。お酒好きなんだなぁ。

「早く一緒に呑みたいなぁ」

 課題を進めるべく、テーブルの前に座った俺の背中に、彼女がそう言った。俺だって、はやく酒を飲める年齢になりたい。でもあと一年。法律がそれを許してくれないんだから仕方ない。

「俺も早く飲んでみたいよ~。そしたら一緒に居酒屋とか行けるもんね」

「お堅いなぁ~、同学年の子でお酒飲んでる子いるでしょう?」

「いるけど、俺はそんなことでバレて問題になったら嫌だからさ」

「真面目だなぁ~。ま、そんなところが好きなんだけど」

 背中越しでも、彼女の顔が浮かぶ。ふやけた笑いを浮かべているんだろう。彼女の手が俺の方に伸びてきた。

「課題、まだやってるの?」

「そう、今日新しいの出されちゃってさ・・・」

「ははぁ~、学生も大変だねぇ」

 そう言いながら彼女が俺の背中を指でなぞる。

「ちょっと」

「んん~?邪魔はしてないよぉ~、背中なぞってるだけぇ~」

 ゾワゾワとした悪寒のような物が背中を走る。くそう、今すぐ振り向いてベッドに押し倒してやりたい。でもこの課題は明日までだから、終わらせないと。

「がんばれ、苦学生!」

「苦学生じゃないよ~」

 課題終わったら覚えてろよ~?

「んふふ、じゃぁ~、これ分かる?」

 そう言って彼女が背中に文字を書く。文字当てゲームが始まった。今課題やってるんですけど?

「え~?なんだろう・・・」

 課題を進めつつ、彼女のゲームにも付き合う。存外器用だなとは思う。時たま彼女は俺の反応が少ないことを怒って、背中を叩いてきたけど、年上のくせに可愛いところが好きなんだ。社会人の女性ってこんなに可愛いモノなんだろうか?

 しばらく課題に集中していると、後ろが静かになった。

 振り向くと、彼女はベッドに横たわって眠ってしまっていた。コップの水は飲み切っていたけど、ベッドが濡れてしまうので、そっとコップを取り上げて、シンクに置いた。

 彼女の寝顔を見ていると、俺も不思議とやる気が湧いてくる。

 よ~し、課題終わらせて一緒に寝るぞ~!


 と思ったところで目が覚めた。机に突っ伏して眠ってしまっていたみたいだ。課題の画面は真っ白だし、背中は痛い。後ろを振り向くと、彼女の姿が無くなっていた。


——あぁ、俺、彼女いたことないんだった——

起きるんじゃなかった・・・。

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