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国王陛下の謁見②

「で、遺体を見た時、グランドマスターはどう思った?」


 陛下が、かっと目を見開く。

 騎士団長は、恭しく頭を下げて答えた。


「かなり以前に亡くなられたご遺体と、お見受けいたしました。はっきりと事情は分かりませんが、部屋と部屋の隙間に、誰かがご遺体を閉じ込め蓋をした。恐ろしいことでございます」


「早速、伯爵をここに呼んでくれ!」


 陛下は脇にいる侍従長に申し付けた。


「伯爵は、その後お元気を取り戻されましたか?」


 私が尋ねると、陛下は厳しい表情で頷く。


「すっかり良くなっているとのことだ。しかし、恐ろしいことだな。毒を簡単に手に入れて、自由自在に操ることができるとは」


「それはやはり、扱い慣れた医師や薬師でなければ、できないことかもしれませぬな。自分の身にも危険が及ぶわけですから」


 騎士団長が言うと、「確かに」と国王陛下も同意した。


 私は、そこで思い切って言ってみた。


「国王陛下、私のような者が口を挟むのは大変無礼ではございますが、やはりそのように薬を扱えるのはリカストワ一族ではないでしょうか? リカストワ一族の、リュドミラ夫人という女性が、かつて伯爵家に仕えていたのです。彼女は既に亡くなっているそうですが、本当は生きていて、伯爵家の中に深く入り込んでいるのでは?……私はそう疑っています!」


 私の言葉に、騎士団長が大きく頷いた。


 伯爵が来るのを待つ時間は、とてつもなく長く感じた。


「私は公爵御一家を信じる。それは、長年ご夫妻のお姿を見てきたからだ。その娘御であるアナベル、あなたを塔送りになんぞしてしまって申し訳なかった」


 突然、そう言って頭を下げる陛下に、私はびっくりした。


「とんでもないです、お顔をお上げください!」


「そなたのことは、子供の頃から知っていて信頼できる子だとわかっていたのに。なんとわしは愚かな……。アナベル、下がっても良いぞ。別室で、しばらく休みなさい」


「ありがたき幸せにございます。でも、伯爵がお見えになるのを待たせてくださいませ」


 そう答える私の声は、感激で震える。

 久しぶりに、貴族の娘としての扱いをされた。そんな気がしていた。


(それにしても、国王陛下はこんな立派な方なのに、なぜ王太子の奴は、あんな “抜け作” なの?)


 私の内心の声を聞いたら、陛下は仰天されるかも。


 やがて現れた伯爵は、最後にお会いした時より歳を取って見えた。毒を飲まされたのだから当然かもしれないが、『すっかり良くなった』とは言えない顔色である。


 彼は陛下に跪き、手にキスする最上級の挨拶をした。陛下は一瞬、驚かれたようだったが、伯爵に穏やかな声音で言った。


「呼び出してすまない、お具合はいかがかな? グラン・ボヌール一座を招いてのお茶会について、もう一度、貴公に詳しく説明してほしいと思ってな」

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