国王陛下の謁見
もう昼近い。
私を乗せた馬車は飛ぶように走り、領地に来た時と同じ、休憩せずに王都に帰った。まさに “とんぼ返り”。
おかげで王都に到着した時は、私は少し疲れを感じる始末だった。でも、これからだ。ここからが闘い。
王宮に着くと、国王陛下に緊急事態だと告げて、面会を求めた。ここでも、騎士団長がいてくれるので、あっさりと御目通りは叶った。
「国王陛下、突然のお願いにも関わらず、御目通りいただき、ありがたき幸せ」
騎士団長は丁寧に膝をつき、騎士の挨拶をする。
「グランドマスター、昨日から大変な騒ぎだったんだぞ。お前が、公爵ご夫妻と共に姿を消したといってな」
国王陛下はそう言って、私のほうを見る。
「アナベル、まずはそなたの無事を喜ばしく思う。しかし、そなたには不逞の輩と見做される行為が諸々あったようだが……。それに、公爵ご夫妻にも、『ご自宅を出てはいけない』、そう命令を下していたはずだが」
「国王陛下、申し訳ございません。私が無理を言って、ご夫妻に伯爵家の御領地まで来ていただいたのです」
「なんだと? 伯爵家の領地にだと? 何を勝手な真似をしている!」
「伯爵毒殺未遂の件ですが、公爵家令嬢アナベル様は無実です。それにつきまして、調べたいこともあり、御領地を訪ねた次第。国王陛下なら、お許し下さると思いまして」
陛下は、ゴホンと咳払いして言った。
「今さら済んだことは仕方ない。一体、何があったのか、説明してもらおうか」
騎士団長は、自分が見たこと全てを、順序立てて説明してくれた。
時折、私を見て、「私の説明で何か不足があれば、お話し下さい」と声をかけてくる。
国王陛下は黙って聞いていらしたが、時々小さな声を上げたり、目を大きく開いたり、表情豊か。そのお姿は、とても人間臭く見えた。
騎士団長が話し終えると、陛下は大きなため息をついて、私たちに声を掛けた。
「全て信じるぞ。ここにおられる公爵家令嬢アナベル・ウィスハート嬢は、伯爵家令嬢ミリアム・ゴールドウィン嬢によって毒を飲まされた。それが全ての始まりということだな」
国王陛下は目を閉じ、団長に聞いた話を自分の中で整理するかのように話される。
「しかし、仮死状態であったのか、アナベル嬢は蘇った。そして、今までグラン・ボヌール一座の女優として隠れていた」
「そうでございます」
「そして、伯爵家に招かれた際、またもや誰かが毒を盛る事件にアナベル嬢は巻き込まれ、その犯人と目された。疑いを持ったグランドマスターが、アナベル嬢達を連れて、伯爵家の領地に乗り込んだというわけだな」
「そうでございます」
「その後、おぞましい話だが、伯爵夫人らしき白骨遺体が見つかったというのだな……」
「そうでございます」
騎士団長の全ての返答が、『そうでございます』という一言だったが、語気は強めだった。




