伯爵夫人の正体②
騎士団長は、今すぐ王都に戻りたいと申し出てきた。
「しばらく馬をお借りしたいのですが」
「それは構いませんが、あなたはどうされるおつもりですか?」
「国王陛下にお会いして、私が見たこと聞いたこと全てをお話しいたします」
「でも、グランドマスター。国王陛下は何て仰るかしら? にわかには信じられないことだらけよ」
「もちろん。どうしてもわかってもらえないようなら、陛下をここにお連れするしかないでしょう。その際には、有無を言わさず王都の伯爵家も家捜しさせてもらう所存」
ルークが、考え考え言う。
「いっそ、今からこの場にいる人たち全員で王都に行かないか? 証人が必要だろう」
しかし、管理者の女性は嫌がった。
「私は参りませんよ! 連れて行かれても、何も言いません。お世話になった伯爵様方を裏切るような真似はできませんから」
「裏切りではない。知っていることを話すだけだ。何も話さないということは、国王陛下に対する裏切りになるんだぞ」
騎士団長は、険しい表情を浮かべている。
「ご遺体は、おそらく本物の伯爵夫人だろう。いつ、どういう経緯で、ここに隠されていたのかわからないが、謂わば、臣下である貴族の女性が、こんな扱いをされていたと知ったら、国王陛下はどんなに失望されることか!」
結局、私と騎士団長が、今からすぐ王都に戻ることになった。ルークが、「俺はここに残るよ」と言ったから。
「ルーク、一緒に行ってくれないの?」
「一緒に行きたいが、あなたのご両親の護衛として、俺は残った方がいいだろう」
領館の使用人は、不誠実な人々ではないはずだ。しかし、今まで伯爵家でずっと働いてきたのだ。伯爵にとって、少しでも不利になる証拠が何かあれば、隠す恐れもあるかもしれない。
それもあって、ルークはここに残ると言ってくれたのだろう。
しかし、あの日から、私とルークは、ずっと一緒に過ごしていた。
「あなたと離れて、一日でも過ごせる自信がないわ」
思わず呟くと、ルークが冗談ぽく言って笑う。
「あなたなら大丈夫。それに、グランドマスターが居てくれる。俺の代わりになれるかどうかは怪しいが」
「……そうね、しっかりしなくては。自分の未来のためだもの、ひとりで頑張る」
「そう。あなたの未来のために。失ったものを取り戻すんだ」
「奪われたものは奪い返してやる、きっと」
ルークは私と握手して、顔を寄せて囁いてきた。
「ご両親の前だから、ここまでにしとくよ」
私も頷いて答える。
「全て終わったら、たっぷりとご褒美をあげるわね」




