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伯爵夫人の正体

「この調子では、この遺体が誰であるか確認することは無理みたいだな」


「ああ、そうだな」


 顔をしかめる騎士団長とルークに、管理責任の男性が、恐る恐るといった様子で話しかけてきた。


「このドレスは、伯爵夫人のドレスだと思います」


「なんだと?」


 騎士団長の目が光る。


「間違いないか」


 男性は目を泳がせつつも、説明した。


 「そう仰られると自信がなくなりましたが……。しかし、このドレスには見覚えがあります。最後に伯爵夫人がこちらにお見えになった際、お召しになっていた物のような」


「確かに、このドレスは貴婦人の物だ。それも、未婚の娘のものではないな」


 ルークが落ち着いた声で言う。

 使用人の女性たちは、今はまだ冷静になれないようなので、一旦ゲストルームから全員揃って出ることになった。

 そのあと、若い使用人の男性たちによって、部屋は片付けられた。


「ご遺体はどうしたの?」


 尋ねる私に、騎士団長が答えてくれた。


「高貴なお方とお見受けしましたので、この領館に置かれていたヴェールでご遺体をお包みして、ゲストルームのベッドにそのまま寝かせてあります」


「そう……。今はそうするしかないわね。でも、一体どなたなのかしら?」


「あの男性が言うように、伯爵夫人かもしれません」


 父の息を飲む音が聞こえ、母は小さな悲鳴を上げた。

「奇妙なことがあるのよ。子供の頃、ここでミリーの “ お母様 ” を何度かお見かけしたことがあるの。でも、ミリーが生まれてから一度も、伯爵夫人はここに来たことがないらしいのよ! 伯爵がそう言ってたわ。そしてもう一つ。毎年、新年のパーティーで、伯爵ご夫妻にご挨拶していたはずだけれど、彼女のことは記憶にないの」


「あまり表に出ない方だから、実は私もほとんどお会いしたことがないわね」


「確かにそうだな。しかし、王家のパーティには偶に来られていたはずだが」


 記憶を辿る両親も、不思議そうである。


「私みたいに、ヴェールでも被って変装していれば、誰だかわからないわよね!」


「でも、そんな大胆な行動を取って、誰も気づかないなんてある?」


 母の呆れた様子に、ルークが提案するように言った。


「とりあえず、脅しをかけてみませんか? リュドミラ夫人が、伯爵夫人として伯爵家に居座っているのではありませんか?と。そして、アナベル様を殺そうとしましたね? と」


「ルークは、黒幕はリュドミラ夫人って思ってるの?」


「それはまだわからない。伯爵も、娘を王太子妃にしたい野心家だからな」


 もしかして、ミリーは操られていた? 父伯爵とリュドミラ夫人によって。

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