壁の中に……
「ルーク殿。こちらに来て、中を見てくれ」
騎士団長に呼ばれたルークは、彼の隣まで行くと穴を覗き込んだ。
「これは!」
ルークも、騎士団長と同じような反応である。
騎士団長は、管理の男性に矢継ぎ早に質問した。
「このゲストルームの隣は、何の部屋だ?」
「隣もゲストルームですが」
「隠し部屋はないか?」
「はい、そのような物は」
「では、ゲストルームの壁と壁の間に、こういう空間があるということか」
「空間? でございますか?」
「この壁を壊すしかないな」と言うルークに、団長は頷き、壁に体当たりした!
「な、何をなさいますか!」
管理人の男性はおろおろしているが、ルークは何度も全身を壁にぶつけた。
「無理だな……」
団長が呟いてから、
「何か斧のようなものを持ってきてくれ」
そう管理人に命令した。
「この壁を破らなくてはならない、何でもいいから持ってきてくれ」
「わっ、わかりました」
管理人の男性は、大慌てで部屋を出て行く。
ルークと騎士団長が、私たちに厳かに告げた。
「この壁の向こうに、死体があります」
父や母、その場にいた全員が悲鳴をあげた。
「皆様の目に触れないように片付けたいと思うのですが、しかし、その死体が誰なのか確認せねば」
「確認?」
「ここに死体がある、ということは、館の誰か関係者だろう」
私たちは、震え上がり呆然となった。
騎士団長は剣をしまうと、手袋が己の手にきちんと装着されているかの確認をした。そこに戻ってきた管理人の男性から、彼は斧を渡された。
騎士団長が思い切り斧を壁に振り下ろす。
ガン、ガンと何度目かの音がして、壁が割れた。騎士団長は、その裂け目に手を突っ込み、壁板を引き剥がす。
力の要る作業のようで、ルークと騎士団長は息も荒く、壁を壊すことに集中している。その間、私たちは無言でその様子を眺めていた。
(一体、何が起きているの? いいえ、伯爵家で過去に何が起きていたの?)
暗い空間に、何か白い物が床に陳列されているような……?
それは、ドレスを着た白骨死体だった。
「きゃあああ」
誰かの、ものすごい悲鳴が響きわたる。
私は、吐きそうになった。霊廟で見た光景。埋葬された白骨の死体たち、埃と匂い。私も、彼ら彼女らの仲間入りするところだったのだ……!
「ルーク」
私は呟いて、無意識に彼のほうに手を伸ばした。ルークが走り寄ってきてくれたので、私は安心して彼にもたれかかる。
「どうしても忘れられない、あの日の」
ルークは頷き、私の髪を優しく何度も撫でてくれる。横目で両親のほうを見ると、母も父にもたれるようにして顔を覆っていた。
その場にいる使用人の女性たちはみんな、床に座り込んだり、しゃがみ込んで動けない様子で、部屋全体が恐慌をきたしていた。




