表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/106

領館を家捜し(やさがし)しよう

 それまで黙って聞いていた騎士団長が、腰に帯びている細身の剣を抜いた。


「ひっ!」


 その場にいる使用人、全員が、散り散りばらばらに逃げて行く。


「驚かせてすまない。申し訳ないが、これから館の隅々まで調べさせてもらうぞ」


 騎士団長がきっぱり言うと、管理人の男性はおろおろした様子を見せた。


「それは困ります。あなた様に何の権限があって、そんなことを!」


「伯爵及び国王陛下のお許しは得ている」


 私たちは驚いて、一斉に騎士団長の顔を見た。

 彼は私に向かって、茶目っ気たっぷりのウィンクをした。それに気づいたルークは、むっとした表情で騎士団長に言う。


「いい加減なことを言うなよ、嘘は身を滅ぼすぞ」


「嘘ではない。私のやること全て、国王陛下はお許しくださる」


 それまでざわざわしていた室内が、ぴたっと静かになった。両親は頼もしそうに騎士団長を見つめ、一瞬だが、私も彼をほれぼれと見てしまう。ひとり、ルークだけが悔しそうな顔をしていた。


「さて。どこから調べましょうか?」


「ゲストルームを。 一等最初に調べてほしいのは、ゲストルームなの!」


「わかりました。では、案内してくれるかな」


 騎士団長は、上目遣いで管理人の男性を見た。その声と姿には有無を言わせぬ迫力があった。


 私は、あのゲストルームの絵画をもう一度じっくりと見て、部屋に取り付けられているという “覗き穴” を確認したかった。

 その穴から、ミリーが私とルークを覗いていたらしいけど……。


 ルークと初めて共に過ごしたゲストルームに入った瞬間、何とも言えない違和感に気づいた。

 以前来た時は、気づかなかった嫌な雰囲気とでも言おうか。


 騎士団長は、ためらいなく例の絵画に歩み寄ると、絵画を外して下ろした。


「随分、簡単に外せるな」


 しかし、そんなことより、私たちは別のことに驚いていた。壁には大きな穴があった。


「まぁ!」


 館の管理をしている、あの女性は呆れた様子である。


「こんなところに、こんな大きな穴が!」


「知らなかったのか?」


 男性が聞くと、女性は困ったように答えた。


「全然! 絵画を外して壁を拭くことはあっても、こんな大きな穴、気づかなかったわ」


「でもミリーが言っていたの。覗き穴が取り付けてあって、そこから客を覗くんだって」


「しかし、こんな大きな穴があったら、客は警戒するだろう? 夜なんか、おちおち寝られや……」


 言いかけて、ルークは何か思い出したように急に黙った。顔が赤くなっている。彼も、あの夜のことを思い出し、大いに困惑しているのだ。


「ということは。最近開けたということ? 絵画が簡単に落ちる仕掛けも作ってあるみたいよ」


「大概の客は、絵画が落ちても掛け直したりなぞしないだろう」


 団長は顎に手を当て、じっと壁の穴を見ている。やがて彼は、ハッとした様子で壁に近づき、壁の穴を覗き込んだ。


「これは!」


 彼のくぐもったような叫び声がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ