領館を家捜し(やさがし)しよう
それまで黙って聞いていた騎士団長が、腰に帯びている細身の剣を抜いた。
「ひっ!」
その場にいる使用人、全員が、散り散りばらばらに逃げて行く。
「驚かせてすまない。申し訳ないが、これから館の隅々まで調べさせてもらうぞ」
騎士団長がきっぱり言うと、管理人の男性はおろおろした様子を見せた。
「それは困ります。あなた様に何の権限があって、そんなことを!」
「伯爵及び国王陛下のお許しは得ている」
私たちは驚いて、一斉に騎士団長の顔を見た。
彼は私に向かって、茶目っ気たっぷりのウィンクをした。それに気づいたルークは、むっとした表情で騎士団長に言う。
「いい加減なことを言うなよ、嘘は身を滅ぼすぞ」
「嘘ではない。私のやること全て、国王陛下はお許しくださる」
それまでざわざわしていた室内が、ぴたっと静かになった。両親は頼もしそうに騎士団長を見つめ、一瞬だが、私も彼をほれぼれと見てしまう。ひとり、ルークだけが悔しそうな顔をしていた。
「さて。どこから調べましょうか?」
「ゲストルームを。 一等最初に調べてほしいのは、ゲストルームなの!」
「わかりました。では、案内してくれるかな」
騎士団長は、上目遣いで管理人の男性を見た。その声と姿には有無を言わせぬ迫力があった。
私は、あのゲストルームの絵画をもう一度じっくりと見て、部屋に取り付けられているという “覗き穴” を確認したかった。
その穴から、ミリーが私とルークを覗いていたらしいけど……。
ルークと初めて共に過ごしたゲストルームに入った瞬間、何とも言えない違和感に気づいた。
以前来た時は、気づかなかった嫌な雰囲気とでも言おうか。
騎士団長は、ためらいなく例の絵画に歩み寄ると、絵画を外して下ろした。
「随分、簡単に外せるな」
しかし、そんなことより、私たちは別のことに驚いていた。壁には大きな穴があった。
「まぁ!」
館の管理をしている、あの女性は呆れた様子である。
「こんなところに、こんな大きな穴が!」
「知らなかったのか?」
男性が聞くと、女性は困ったように答えた。
「全然! 絵画を外して壁を拭くことはあっても、こんな大きな穴、気づかなかったわ」
「でもミリーが言っていたの。覗き穴が取り付けてあって、そこから客を覗くんだって」
「しかし、こんな大きな穴があったら、客は警戒するだろう? 夜なんか、おちおち寝られや……」
言いかけて、ルークは何か思い出したように急に黙った。顔が赤くなっている。彼も、あの夜のことを思い出し、大いに困惑しているのだ。
「ということは。最近開けたということ? 絵画が簡単に落ちる仕掛けも作ってあるみたいよ」
「大概の客は、絵画が落ちても掛け直したりなぞしないだろう」
団長は顎に手を当て、じっと壁の穴を見ている。やがて彼は、ハッとした様子で壁に近づき、壁の穴を覗き込んだ。
「これは!」
彼のくぐもったような叫び声がする。




