久しぶりの休息②
ここで隠れ住むにしても、頭の痛い問題がたくさん横たわっている。
それは “生活” だ。
中でも、食料の調達が一番の難問。
「畑があるみたいだけど、今から作物を植えるわけにはいかないし。そもそも私は農作業なんて、したこともないし」
大きなため息をつく私に、ルークが笑った。
「心配するな。当面は金で解決する」
「お金?」
「金を払って、食料を分けてもらうのさ」
「あなたって、いつも気前よくお金を払ってるわね。お金持ちなの?」
私は、冗談ぽく尋ねた。
「ああ、そうさ」
意外にも、ルークは真顔で簡潔に答える。
「両親の遺産があるのさ」
「まぁ!」
「思えば、貴族がそうやって富を独占していたのが、隣国の革命の発端かもしれんな。……しかし、両親のおかげで、あなたと天国暮らしが出来るんなら、俺は何も言えない」
ルークは、私の額に軽くキスした。
「さあ、おいしい朝食をいただこう。隣の人が、産みたての卵と搾りたての牛乳を、気前よく分けてくれたんだ」
私は、テーブルの上に並んでいる朝食に目を見張る。
「あなたって、本当に何でも器用に出来る人だわ! それに引き換え、私は無能ね」
「女優の才能があるじゃないか! そもそも、あなたの存在が、俺にとって宝物なんだよ。無能だなんて、つまらないことを言うんじゃない」
『存在が宝物』
そんなことを言ってくれるのは、両親とルークだけだろう。
「ありがとう。私にとっても、あなたの存在が、かけがえのない宝物だわ。お父様とお母様が、あなたのことを知ったら喜んでくれる気がする。……でも、今の私は犯罪者の疑いをかけられている。どうしたらいいの」
「公爵ご夫妻のことだが」
「なあに?」
「あなたのご両親は、静養先から連れ戻されて、ご自宅で軟禁状態らしい。昨日、王都で聞いてきた」
「何ですって?」
「さすがに、何の罪も犯していないご夫妻を、酷い目に合わせるわけにはいかないから、ずっと閉じ込めて監視するだけだと思うが」
「何もしていないのは私もだけれど、お父様とお母様こそ、全く何の関係もないじゃない!」
「一族郎党全員、罪に問われることもあるくらいだからな。今後、塔送りにするつもりかもしれない」
塔ですって? 私は目の前が暗くなった気がして、実際、体がふらついた。
ルークが素早く私の手を掴んでくれなかったら、実際に倒れていたかもしれない。
「大丈夫だ。我々には、一座の皆やおやっさんといった味方がいる。それに、新たな頼もしい味方も見つかったことだし」
「新たな味方?」
「騎士団長さ」
「グランドマスター?」
「俺たちを逃がしてくれただろう? おやっさんに頼んで、こっそり連絡を取ってみる」




