優しいルーク
あんなに痛かった足が、ルークと一緒なら痛みを忘れてしまう。
私たちは、草むらの真ん中に延々と続く広い道を、手を取り合って走って行く。
時折、農夫の集団とすれ違った。
どうやらここは、王宮に一番近い村のようである。
突然ルークが立ち止まり、私を心配そうに見た。
「どうかした? ルーク」
「疲れただろう。まだ歩けるか?」
「ええ、大丈夫よ」
しかし、彼は私の足を見て呟いた。
「こんな繊細な靴を履いていたのか」
彼はそう言うと、私を抱え上げ、道から外れて、草むらに連れて行ってくれた。
「かわいそうに! こんなに赤く腫れ上がっているじゃないか!」
「ただの靴擦れよ、大したことないわ」
しかし、ルークは眉を寄せ、心配そうに私の足を見ている。
「しばらくここで待っていてくれ。見つかるかどうかわからんが、馬車を探してみる」
彼はそう言うと、ガサガサ音を立て、丈の高い茂みから出て行った。ひとりでいると、心細さで足の痛みがひどくなる気がする。待つ時間は、とても長く感じられた。
しばらくしてルークが戻ってきて、
「アナベル、さあ!」
そう言うと、私をおぶってくれた。
道には、粗末ではあるが、頑丈そうな馬車があった。
馬車に乗って、ようやく一息つけた。
ルークはまるで、私を離すまいとするかのように、ぴたりとくっつき、時折思い出したように、私の髪を撫でてくれる。
「ルーク、体のほうは大丈夫なの?」
「おやっさんに薬を処方してもらって、元気になったんだ」
「まあ! 毒に効く薬はないって、以前あのお医者様は仰ってたわよね?」
「薬というより、強壮剤というものだな。元気が出る」
「そうなの。それにしても、何故私にだけ症状が出なかったのか不思議だわ」
「アナベル、出された物、ひととおり口をつけたか?」
「ええ。お茶なんて、何度もおかわりしたわ」
「お菓子も?」
「もちろん。シシィが気に入っていた栗も、いっぱい食べたわ」
「そうか」
「食べ物に毒は入ってなくて、食器に既に毒が入っていたとか? いずれにしても、伯爵家の使用人、みんなグルじゃないの!」
私は憤慨して声が大きくなる。ルークが宥めるように、私の頬にキスした。
「ありえないことではない。落ち着いたら、そちらもちゃんと調べなくては。おやっさんは、もしかしたらアナベルに、毒の耐性がついているのかもしれないと言っていた」
「どういうこと?」
「あなたは大量の毒を盛られて亡くなった。その際、免疫のようなものがついたんじゃないかってことだ。子供は麻疹になると、二度と罹らないと言われている。そんなもんらしい」
「そんな考え方があるのね」




