今度は王宮の地下牢
すると、扉を開けて王太子様の護衛兵が、雪崩を打ったように飛び込んできた。
王太子様は目を丸くし、
「お前たち外で聞き耳を立てていたのか」
と、呆れた様子である。
「まあいい。この女を連れて行け!」
私はまた両脇を抱えられるようにして、その場から無理矢理立たせられた。
「王太子様、どうしてミリーを調べてくれないのです?」
「その必要はない。伯爵も医師も、みんなお前がやったことだと言っている」
伯爵様は助かったのか。
良かったと言うべきなのだろうが、彼もやはり私を陥れようとしている。
「王太子様、ではお聞きします。私を殺そうとした犯人は誰なのです? 黒幕は一体誰?」
「黒幕だと? ……さあな。それは、もうこの世にいない人間かもしれないな」
「なんですって?」
「そのリュドミラ夫人とかいう女の幽霊じゃないか?」
王太子様は、そこで気が狂ったように笑い始めた。
「アナベル。もしかしたら、お前はいろんな人間に恨まれていたのかもしれないぞ」
「どういうことですか?」
「お前は私を裏切った。私には上品ぶって、指一本触れさせなかったくせに、あんな卑しい支配人には簡単に体を許すんだな。そんなゲスな性根の女は、誰から恨みを買っているかわからないではないか!」
部屋から連れ出される瞬間、私は振り向いて叫んだ。
「ゲスなのは、あんたのほうよ! 婚約者を裏切り、他の女を孕ませるようなゴミ×××は地獄に堕ちろ!」
私は、屈強な兵士たちに囲まれ、謁見の間から連れ出される。王太子様が何か怒鳴っているようだが、そんなことはもうどうでもいい。
そしてまた、王宮の長い長い廊下を歩かされた。心の中で叫ぶ、もう勘弁してよ……と。
痛む足を引きずりながら歩き、連れていかれた先は、またまた地下牢であった。
王宮にも、こんなところがあったのね。私の実家である公爵家の館にも、こんなものはあったのだろうか?
地下牢の扉を開けると、中は粗末な寝台とテーブル、椅子があるだけだった。
兵士たちは私をそこに入れると、
「今夜はここで。また、国王陛下のお沙汰を待て」
と言って出て行った。
(やれやれ。国王陛下の承認後、ここから今度は噂の “塔” に連れていかれるのか)
塔は、王宮からそう遠くない場所にあり、殺人などありとあらゆる犯罪を犯した貴族たちが閉じ込められている。死ぬまで出られないと、もっぱらの評判だ。
過去には、その塔には、事情があって表に出せない王族の人たちも幽閉されていたらしい。
塔に閉じ込められていた人々の、怨念渦巻く亡霊の館と噂されている。
しかし、この地下牢も、気持ち悪さは塔と変わらないかも。硬い地面に、どこから入ってくるのだろうか、百足やヤスデ、他にも見たことないような気持ち悪い虫が、コソコソガサガサ音を立てて蠢めいている。
おかげで、横になってゆっくり眠ることもできず、私は膝を抱え寝台に座った状態で、一晩耐えるしかなかった。




