取り調べ
馬車から降りると、いきなり手鎖を嵌められた。
木製のそれはとても重く、重みと痛みに顔をしかめる。
「貞操帯と足枷を付けられないだけ、マシだと思え」
誰かが言い、ゲスな笑い声が響く。
王太子様の護衛兵って下品な連中だったのね。やれやれ……。
ヴェールを外され、完全にむき出しになった顔を晒し、門から王宮に続く長い長い砂利道を歩かされる。
足が痛い。今日は、いつもより少しだけおめかししていたために、靴も繊細な作りである。
王宮に入ると、足元は少しましになったけれど、鎖をつけたまま宮殿の廊下を歩くのは辛かった。今日も王宮には、遊びに来ている貴族が其処此処に居り、好奇の目で私を見てくる。
なんという屈辱。
どれくらいの人が、私のことを公爵家令嬢と気づいたかはわからないけれど、一組の男女の会話が聞こえてきた。
「あの女、何をしたんだろう?」
「王宮に連れてこられたということは、貴族ですわよね?」
「それにしては、みすぼらしい女だな」
「でも、品がありますわ。どこかで見たことがある気がするのですけれど」
謁見の間に到着した時、私はすっかり疲れ果てていて、戦う気力も萎えかけていた。
「アナベル、全部話すのだ。一体、お前が死んでから何があった?」
どうやら、王太子様は、とりあえず私に説明させてくれるようだ。まだ希望はある。
私は、さっき馬車の中で考えたことを全て説明した。
その間、王太子様は黙って聞いてくれていた。
私が説明し終えた時、
「言う事はそれだけか」
と、王太子様が冷たく言った。
「それだけか、と申しますと?」
「アナベル、お前の主張には何の証拠もない。本来なら、お前は国家反逆の罪で即死刑なのだが、公爵家令嬢であり、未来の王妃となるはずだった人間を死刑にするのは忍びない。お前には、今後は “塔” で生活してもらおう」
「塔ですって?」
王太子様が言う “塔” って、貴族の犯罪者が死ぬまで閉じ込められる場所のこと?!
「お待ちください。私の話を聞いてくださった上で、なぜそんなことを仰るのです?」
「何も証拠がないではないか。お前の話すこと全て、お前にとって都合の良い作り話に過ぎない」
「でも、私に毒を飲ませたのはミリーで間違いないです。彼女がくれたワインを飲んですぐに、私は倒れたのですから」
「それも証拠がないではないか」
「ミリーの世話役だったリュドミラ夫人という人は、毒薬の扱いに長けた女みたいです。ミリーはおそらく、彼女から毒を譲られていたのでしょう」
「だから! それもお前の妄想だろう? それに、お前の衣服に毒薬の包み紙が隠してあった、と医師は申しておったぞ」
「ですから! それも私を罠に嵌めるために、その医師が言っているだけです! 彼も、リュドミラ夫人の一族なのですよ」
「黙れ!」
王太子様は叫んで、パンパンパン、と三度手を打った。




