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信じられない展開

「覗き穴ですって?……気づかなかった」


 さらに、ミリーは笑う。


「絵があったでしょ?」


「あの絵、偶然落ちたんじゃないのね」


「そうね。ちょっとした仕掛けがあるのよ。でもあれを作ったのは私じゃない。お父様よ」


「伯爵様が?」


「そうよ。お父様は、領館にゲストを招く際、必ず監視していたの。貴族の嗜み(たしなみ)みたいなものよ。中には、あなたたちみたいに、破廉恥なことで楽しませてくれる方々もいるし」


 ミリーは再びおかしそうに笑う。私は恥ずかしさから、無言で俯いていた。


「お父様は、そういう話を全部、私に話してくれていたの。昔、ゲストルームに長滞在(ながたいざい)していた大親友がいてね。ある日、その大親友が、若い娘を部屋に引き込んだのよ。お父様はショックだったみたい。なぜなら、お父様は、その娘のことを気に入ってたの。いずれは第二夫人に迎えたいと思うほどに」


「もしかして、その娘さんが、あなたの本当のお母様?」


「いやだ! アナベルったら。あなたも全部知ってるじゃない、伯爵家の内情を」


 私は、ネタ元については喋らないつもりだ。


「人の口に戸は立てられないって言うけれど、本当に貴族の世界は狭いわね。どこかしらで繋がっていて、みんな何でも知っている。秘密なんて無いに等しいわね」


「そうかもしれないわね。もしかして、あなたの世話役だったおばさん、リュドミラ夫人ってアンナ・リカストワじゃないの?」


「驚いた! 何でも知ってるのね」


 ミリーはそう答えつつ、さして驚いてはいない様子だ。


「あの伯爵家お抱え医師は、リカストワ一族じゃないの?」


「そうよ。鋭いわね。医学薬学に長けている彼らは、わが国にも、たくさん移住して来てるわ」


 やはり、そうか。本題に入ろう。


「ミリー、今日のことだけれど、何故私を犯人に仕立てようとしたの?」


「今日のことって、何のこと?」


「お茶会で、食べ物に毒を入れたでしょ? 医師が、私のヴェールに毒薬の包み紙が刺さってたって言ったのよ! それって、私が毒を入れたことにしたいのよね?」


 興奮して、段々声が大きくなってしまう。そんな私に対して、ミリーは至って冷静に答える。


「私は無関係よ。何も知らないわ」


「とぼけるのも、いい加減にして!」


 ミリーは、ふんと鼻を鳴らして言った。


「そろそろ、いい頃かしら」


「そろそろ、いい頃? 何を言ってるの?」


「王太子様!」


 突然、ミリーが部屋の入り口に向かって叫び、その場に倒れた。

 いつの間にか、王太子様が扉の前に立っている。背後に騎士を大勢連れて。


「何があった? ミリー! しっかりしろ!」


 王太子様が叫んで、ミリーに駆け寄ってきた。

 彼女は苦しそうに答える。


「私は大丈夫です。そこにいる、アンコニュことアナベル・ウィスハート公爵家令嬢に、私たちは殺されかけたのです!」


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