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ミリーの自白

「ミリー。あなた、大丈夫なの?」


 とっさに口をついて出たのは意外な言葉だった。私は、彼女のことを心配しているのだろうか。こんなことになっても。


「アナベル、ふたりきりで話がしたいわ、いいかしら?」


 ミリーは、片方の唇をゆがめるようにして笑った。初めて見る彼女の下品な顔つきに、内心私はたじろぐ。


「いいわ。望むところよ」


 毒を盛られてから、いろんなことを経験した私だけれど、いちばん衝撃だったのは、別人になったミリーを目の当たりにしたこと。

 こんな、蓮っ葉な下品な女だったかしら……?


 私がダイニングルームから出かけた時、背後で「アナベル!」と呼ぶルークの声に気づいたが、私は振り返らなかった。


「アナベル、どこまで知っているの?」


「何が言いたいの?」


「あなたに毒を持って殺そうとしたのは私よ」


 ミリーは、あっさり言った。


「やっぱり、そうなのね」


「許してとは言わないわ。だって、あなたは邪魔だったんだもの。私はどうしても王太子様の妻になりたかったの。それも、側妃では我慢できない。王太子様を独り占めしたかったの」


「そんなに王太子様、いいえ、王妃の地位が欲しかったの?」


「そうね。子供の頃から父に刷り込まれて育ったから、そうなるしかないと思い込んでいたのかも」


 ミリーはずっと微笑んでいる。

 不気味だ。


「でも、いつの間にか、王太子様のことを本当に好きになっていたの。でも、王太子妃になれるのは公爵家の娘だけ。私は側妃にしかなれない。しかも、まずいことに、あなたと私は幼なじみの親友よ。……アナベル、あなた嫌じゃなくって? 親友が、自分の夫のもうひとりの妃だなんて」


 彼女は、本当に心から王太子様を愛しているのか。

 私はどうだろう。生まれた時から婚約者と決められていたから、深く考えたこともなかった。王太子様を愛するのは当然のことだと。でも、私と王太子様はキスはおろか、手を握ったこともなかった。


「ねえ、ミリー。あなたと王太子様は、いつから」


「何?」


「……いつから関係があったの?」


 他にも聞きたいことはあったが、一番知りたいのはそれだった。


「最近よ、一年も経っていない。私から誘ったの。王太子様は喜んでお相手してくれたわ。あなたったら、王太子様に手も握らせなかったのね」


 あっけらかんと答えられ、私は返事に困った。


「アナベルは真面目でお堅いから、そんなこと出来ないんだ、って仰ってたわ。今となっては、あなたがお堅いなんて、ちゃんちゃらおかしいわね!」


 ミリーが、声を立てて笑った。


「壁の覗き穴から全部見せてもらったわ、あなたと一座の支配人の……。随分、情熱的ですこと!」


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