地下牢獄
とにかく、ここから出してもらわないと!
どうすればいい?
そうだ! 私も毒が回ってきたふりをすればいいのだ。
「うっ! 苦しい。誰か」
私は演技する、かつてないほど真剣に。
本当に、毒を盛られた人間になりきって。
「ああ、苦しい! 誰か、誰かいませんか?」
大声で叫んだけれど、あたりは静まり返っていて、誰も来てくれない。
どうしたらいいのだろう。私は大きく息を吸い込んで、もう一度叫んだ。
「誰かぁ! お願い、助けて!」
すると、こつこつという足音が聞こえてきた。
カチャカチャという金属音も聞こえる。
私は喉のあたりを抑え、もがき苦しむふりをした。
「どうした?!」
男性の声がして、その人だろうか、扉の覗き窓から、人の目だけが見えた。
「苦しいんです。……私も今頃、毒が回ってきたみたい」
そう言って、私は喉を掻きむしる仕草をした。
「なんだって?」
伯爵家の使用人だろう、まだ若い男性が驚いた様子で、扉を開けて入ってきた。
「しっかりしろ」
男性はそう言うと、私を抱き起こした。
「すみません」
私は、わざとらしく息も絶え絶えな様子を装う。
男性はそのまま、今度は私の背中を撫でてくれた。
「ありがとうございます」
男性の行動が予想外だったので、私は戸惑っていたが、男性が不審そうに言った。
「お前、婆さんだと思ったが、意外に若いんだな」
「いいえ、そんな事ありません。年寄りですよ」
低い声で、苦しそうに答える。
「いいや、違うね」
男性はそう言うと、遠慮なく私の体を撫でまわし始めた。
「おやめ下さい! 何をなさるのですか?」
必死で抵抗するが、男はものすごい力で、私を床に押さえつけた。
「やはり思ったとおりだ。弾力のある若い肌!」
男は嬉しそうに叫び、私の服を剥ぎ取ろうとする。
予想外の展開に驚きつつ、私は身を捩り、必死で抵抗した。
「お離しください。こんな醜い年寄りですよ!」
私は叫んで、思い切ってヴェールを外した。
一瞬、男は怯んだ様子を見せたが、「構うもんか!」と叫ぶと、再び私にのしかかってきた。
なんということだろう!
ここから出るどころじゃないわ。浅知恵で、自らの身を危険にさらしてしまった。
「助けて、誰か!」
私はこれ以上ないくらい、大きな声で叫ぶ。
「なんだ、元気じゃないか。嘘でおびき出すなんて、いい度胸してやがる」
舌なめずりせんばかりの、男の表情に吐き気がする。
抵抗したことが、逆に男の嗜虐性のようなものを呼び覚ませてしまったのか、男はドレスの裾を捲り上げようとする。
「たまらねえ!」
あまりの悍ましさに、本当に気分が悪くなってきた。
男の力にはなす術もないのか! その時だ。
『アナベル、しっかりするんだ。あなたなら大丈夫』
ルークの言葉を思い出し、私は男の急所を思いっきり蹴り上げた!




