一座は引っ張りだこ
お茶会から、さらにしばらく経って。
今度は伯爵家からお誘いがあった。
「もはや、私たちって名士の仲間入りなんじゃない?」などと、シシィが笑って言うくらい、他家からも毎日のように招待が来る。
同時に、ルークは何事か考え込んでいるようで、私はそれが気になっていた。
ある夜のこと、私はいつものように彼の腕の中でうとうとしていた。
ふと、彼がそっとベッドを離れる気配に気づく。
「ルーク?」
無駄な贅肉が一切ない、美しい彼の背中に私が見とれていると、彼が振り返った。
「そろそろ、片をつける時が近づいているな」
「片をつけるですって? 何を?」
「伯爵家の招待を、ありがたくお受けする」
私は笑った。
「そのことなの。随分、嫌味な言い方をするのね」
「ミリーを一気に攻めて、全てを露わにするんだ」
私はベッドから起き上がり、ルークに尋ねた。
「えっ、待って。ミリーは伯爵家に帰って来てるの?」
「ああ。少し元気を取り戻した、そう伯爵は言っていた。また占い師さんに会いたい、とも言っているそうだ」
何故かミリーは、占い師姿の私に、彼女の世話役の女性を重ね合わせている。あの、過去に毒薬事件を起こしたリュドミラ夫人と、私が疑っている女性。
「ねえ、ルーク。ミリーを一気に攻め立てるって、私の正体を明かすの?」
「いいや、あなたは幽霊として現れるんだ」
「えっ? 私が、私自身の幽霊役をやるの?」
「ミリーを呼び出して、一人になったところに、あなたが現れる。埋葬された時の姿で」
「ミリーは、さぞかし驚くでしょうね!」
「そうだ。思い切り驚かせて白状させる」
「そんなにうまく行くかしら?」
「うまく行かせるのさ。そのためには、伯爵家のお屋敷の内部を思い出してほしい。どこか暗くて、あまり人が来ない所はないか?」
私は、一生懸命、思い出そうとした。
伯爵家には、子供の頃から何度も行ったことがあるが、我が家と同じような作りであった。
あまり人が来ない所。そんな場所はあったかしら?
そうだ! 隠し扉があるはずよね。
「王宮も貴族のお屋敷も、どこでも隠し扉があるの。普段は家具なんかで隠してあるんだけど、その奥は部屋になってて、さらに外に繋がる通路もあるのよ」
「ほう?」
ルークの眉が上がり、興味深そうな顔になった。
「敵が攻めてきた時とか、革命が起きた時とか。隠れる場所が必要だからって、聞いたことがあるわ。私の屋敷にもあるわ。でも、今まで実際に使われることはなかったし、絶対に家族以外には秘密にしている場所なの。だから、残念だけど、伯爵の館のどこにあるかわからない」
「そうか。なら、そこは除外だな」
「暗い場所じゃないと、幽霊にならないわね」




