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王宮のお茶会

「なぜだ? 無事、王宮での興行も出来たじゃないか」


「興行とお茶会は違うわ。テーブルについて、顔を突き合わせて、ゆっくり歓談するのよ。誰かに気づかれたらと思うと、怖くて行けない」


「舞台の時だって、あの場にいた貴族全員から注目されていたじゃないか。しかし、誰も何も思わなかっただろう?」


「それは、役者として、あの場にいたからじゃろ。観客は皆、嬢ちゃんを我々一座の役者と思い込んでいたからな」


 アルフォンソ老が、大きく首を振って頷いた。


「……わかった。しかし、アナベルも王宮に行って、また王太子に探りを入れるべきだと思うんだが」


 ルークは残念そうだ。


「探り?」


「王太子は言ったのだろう? ミリーの性格が気になるから正妃にはしたくない、って」


「ええ。そうだったわ」


「側妃にする決定を下して、今後正妃はどうするつもりなのか、気にならないか?」


「いいえ」


 それは正直な気持ちだった。私を裏切って、私のかつての親友と関係を結ぶような真似をした王太子様なんぞ、かけらも興味がない。


「ほんとうに?」


「ええ。大貴族の娘なら他にもいるから、国王陛下や側近が適当に見つくろうんじゃないかしら」


 傍で、私たちの会話を聞いていたアルフォンソ老が爆笑した。


「正妃を見つくろうのか。まるで、モノ扱いじゃなあ」


 そして迎えたお茶会の日。

 私は劇場で留守番をしていたのだが、お茶会から帰ってきたルークたちから詳細を聞かされた。


 お茶会にいたのは、王族からは国王陛下、王妃様、王太子様。貴族は、侯爵や伯爵といった上級貴族。お父様とお母様は、もちろん参加していない。


「あとは、我々みたいな商人が多かったな。ギルドのマスターも大勢来ていたが」


「王太子様は残念がってたわね。『アンコニュさんといいましたか、あの占い師さんは来られてないのですか?』って」


「俺にも言ってましたよ。『占い師さんにお会いしたかったなあ』って」


「『ヴェールでお顔はわからなかったが、姿も声も美しい人でしたね』とまで言ったのよ!」


 シシィとジュリアンの会話に、ルークが不機嫌そうに口を挟む。


「あいつ、まさかアナベルって気づいたなんてこと、ないだろうな」


「あいつ?」


「王太子だよ」


「あんたって、罰当たりね。言うに事欠いて、次期国王を “あいつ” 呼ばわりなの!」


 シシィが吹き出す。


「今更、アナベルを正妃に迎えたい、なんて調子いいこと言い出すつもりじゃないだろうな」


 ルークは爪を噛みながら、いらいらした様子で部屋を歩き回る。


「ルークったら! 王太子様にとって、私は既に死者なのよ。それに、この姿じゃ、王太子様も嫌がるわ」

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