ルークは考える
その日からしばらくは、静かな日常を送っていたが、一方で私自身は落ち着かない日を過ごしていた。
復讐のこと、今も静養中の両親のこと、そして一番私を悩ませているのは、ルークとのこと。
ルークは昼間は忙しくしていて、夜だけしか話せる時間がない。
シシィが怒りを爆発させた日から、なんとなく私たちは大っぴらに毎晩一緒に過ごすようになっていたけれど、それはいいことなのかどうか。
ある夜のこと、私は彼に尋ねてみた。
「復讐のことだけど、これからどうしたらいいの? あなたに任せておいて大丈夫?」
ルークは余裕の笑みを浮かべている。
「やきもきさせて申し訳ない。いろいろなパターンを考えているんだ。伯爵の領地に再び招かれた場合。逆に、劇場に伯爵やミリーを招いた場合など」
「そう」
「ただ、なんとなくだが、上手く行かない気もしてるんだ……」
「なに? いきなり不安にさせないで」
ルークは、言葉と裏腹に、ずっと微笑んでいるが、どういうことだろう。
「毒薬の入手先や何もかも、まだわからないままだが、伯爵の人柄はわかった気がする」
「立派な方よね」
ルークは黙っている。私はさらに付け加えた。
「ほとんどお話したことはなかったけど、子供の頃から優しそうな方だと思ってたわ」
「俺は、二人きりで話をして、少し怖い気がしたんだ」
「怖いですって?」
伯爵は、私からしたら怖い方ではない。
寛大で思いやりがある方だと思う。
「上手く説明できないのだが」
ルークは顔を曇らせる。
「一対一で話してみて、なんとなく怖い人だと思ったんだ。それと、あなたから聞いた噂話。ミリーが実の娘ではないと、疑いつつも受け入れているかもしれないと知って、益々怖くなったんだ」
「何が言いたいのか、さっぱり」
肩をすくめる私に、ルークはぽつりと言った。
「俺ならどうするだろう、って考えてしまった」
「えっ?」
「子供に罪はない。俺だって、愛する女性が産んだ子なら大事に育てるだろう。でも、人間は愚かで弱い生き物だ。どこかに綻びが出て、愛する人や子供を傷つけてしまうこともあるかもしれない」
「だとしたら怖いわ」
「そう、そうなんだ! 伯爵の顔つき、ミリーのことを語る時の目つきに、何か怖いものを感じてしまったんだ」
「ミリーのこと、何て言ってたの?」
「ミリアムは、この世で一番大切な娘だ、と」
「私のお父様も、私のことをそう思ってくれているはずだわ」
「少し違うな。ミリーは母親そっくりだから、とも言った。娘をなんとしても王太子妃にしたかった、そう冗談めかして言っていた」
「まあ!」
「失礼ながら、王太子妃は公爵家令嬢と決まっているのではないですか? と聞いてみた。すると……」




