表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/94

すれ違う思い

「誰?」


 私は扉に耳を当てた。


「俺だ」


 ルークの囁き声がする。


「ルーク? なに?」


 私が扉を開けた瞬間、ルークが部屋に滑り込んで来た。


「どうしたの? 何か用?」と尋ねた瞬間、彼に抱きすくめられる。


「ルーク!」


「ここなら、シシィも文句はないはずだ。……アナベル、いやか?」


 私は黙って首を横に振った。


「ああ、アナベル!」


 そのまま、ベッドまで運ばれる。

 その後は、私も彼も情熱の渦に巻き込まれたように、激しく求め合ってしまった。


(私ったら、どうしたんだろう? ルークを見ると、変な気持ちになって、されるがまま。でも、もちろん嫌じゃない)


 ルークの胸に顔を寄せ、私はため息をつく。


「アナベル、どうした?」


 私は正直に答えた。


「ルーク、私、おかしいの。あなたを見ると、胸がざわついて、抱きつきたくなるの」


「アナベル! 嬉しいよ、俺も同じ気持ちだ」


 ルークは嬉しそうに言い、私を抱きしめた。


(私たちの関係に未来はないわ。私は公爵家令嬢だし、ルークとは身分が違う。でも、私は “傷物” になってしまったから、王太子妃になるのはもう無理なことよね。それに、こんな顔だし)


 医師が言ったように、あざはほんの少し薄くなった気もする。しかし、動いたり興奮したりすると、色が濃くなる気がする。


 私はルークの腕の中で幸福感を味わいつつ、絶望感も感じていた。

 あ、そうだ! ミリーの出自についての噂を、ルークに伝えなくてはいけなかった。


「ねえ、ルーク。私は、領館の管理をしているっていう女性から、面白い話を聞いたのよ」


「面白い話?」


 私はルークの胸に頭を預けたまま、話を始めた。ルークは、ずっと私の髪を撫でていたが、肝心なことを伝えた時、彼の手がピタと止まった。


「伯爵の子じゃない、だと?」


「ええ、伯爵の領地では、公然の秘密らしいわ」


「そんな娘を王家に嫁がせるつもりだったのか」


 ルークが呻くように言ったが、私は特に何とも思わなかった。


「でも、結局、ミリーは側妃になるのだし」


「しかし、ミリーの産む子が、次の王太子になるかもしれないんだぞ」


「未来の王妃が、御子様を産めばいいんでしょ?」


 私は、疲労感からか眠くなってきて、あくびを押し殺す。


「未来の王妃。アナベル、あなたかもしれないんだぞ」


 私ははっとなって、しゃんとした。


「でも、私は死んでるのよ」


「何を言ってる。とにかく、あなたを殺そうとした犯人をあぶり出したら、あなたは公爵家に帰るんだ」


 ルークに語気強く言われ、私は頷いた。しかし、納得してはいない。


「もちろん、そのつもりよ。私もそろそろ家に帰りたくなってきたの。でも、帰っても、元の婚約者の地位には戻れないわ」


 私は、暗にルークとの関係が邪魔をしているということを(ほの)めかしたが、彼は何か考え事をしているようで、返事してくれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ