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出生の秘密②

「えっ? 内緒の話ですか?」


 彼女は真面目な顔をして話し始めた。


「お嬢様は、本当は伯爵様の御子じゃないって噂があってね。根も葉もない噂なんだけど、ほら、みんなそういう噂って好きでしょう? でも、伯爵様はジェシカさんを心から愛しておられたから、仮にお嬢様が画家の子だったとしても、気になさらないんじゃないかしら」


 胸がどきどきする。私は口元を覆っているヴェールを目の下まで引き上げた。頰が熱い。


「まさか。……お嬢様は伯爵家の正当な跡継ぎではない、ということですか?」


「そうなるのかねえ。でも、お嬢様は王太子様の側妃になられるんだから、伯爵家は遠縁の方が継がれるんじゃないかしら。そのほうがいいよね」


 彼女は含み笑いしているが、私は黙って頷くしかできなかった、あまりに驚きすぎて。

 彼女は私の沈黙に、少し焦っている様子を見せた。


「ここだけの話にしておいてくださいね。この辺では “公然の秘密” といっても、街なかや王宮の人たちは知らないことだろうし」


「もちろんですわ。ご安心ください、絶対に誰にも話しません。私は口が固いことには定評があるんです。でも、領地の方々は、皆さんご存知の話なんですよね?」


 彼女は大きく頷いて、肩をすくめた。

 探りを入れてよかった……!


 その夜、私たち一座は豪華な晩餐を楽しんだ。

 伯爵の心尽くしに感謝し、明日の公演の成功を予祝して乾杯する。


「明日で皆様とお別れと思うと残念です。ミリアムを慰めていただき、感謝しています」


 伯爵に言われ、ルークは丁寧にお辞儀した。


「お嬢様に楽しんでいただけたようで、私どももこちらにお伺いしてよかった、と心から思っております」


 ルークが、私のほうを意味ありげに見てくる。私は慌てて彼から目を逸らした。


「娘ミリアムが、そちらの女優さんに今後もそばにいてほしい、とまで言っておりまして困っています」


「え!」


 伯爵の言葉に、私はもちろん、一座全員が驚きの声を上げた。


「ミリアムは寂しい子なのです。産まれた時から母はいない。子供の頃に仕えてくれた老婦人もいない」


 伯爵は、そこまで言って、私のほうをじっと見つめてきた。


「あなたは、その女性に似ている、と娘が言い出しましてな。そう言われてみると、そんな気もします」


 私は、伯爵の強い視線を受け止めかねて、うつむいた。


「しかし、一座の女優さんに仕事を辞めて、ミリアムのそばにいてほしいなどと、わがままは言えません。またいずれお会いすることがあれば、ミリアムと仲良くしてくだされば幸いです」


 伯爵は、手に持ったワイングラスを高く掲げて微笑んだ。

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