ミリーと対決?
パーティールームでは、既にミリーが着席して待っていた。
彼女の表情は固く、顔色も良くないように見える。
(突然の婚約破棄だものね。元気がないのも当然か)
ミリーは、縦一列になって部屋に入った私たちに、微笑みかけてきた。
「今日は、私の為に、ようこそお越しくださいました。礼を言います」
こんなふうに、貴族の令嬢として振る舞うミリーの姿を見るのは新鮮である。
彼女のふっくらしたお腹が、嫌でも目に入るが、私は動揺しなかった。諦めもあるだろうが、最も大きな理由は、今の私は愛に満たされているからだろう。
私は、ちらっと、ルークのほうを見た。
ルークは真剣な顔で、ミリーにお辞儀している。
ミリーは王太子様に愛されているけれど、私だってルークに愛されている。
王太子様の愛情は失ったけれど、代わりに私は自分の手で、この素敵な男性の愛情を掴み取ったのだ。
負けるもんか。
私は、いつものヴェールで顔を隠していたが、ヴェールを外したい気分だ。
「あら! あなたは」
突然、ミリーの甲高い声が響いた。
「あなたは、顔にあざのある女優さんね。その節は失礼しました。あの日のこと、許してくださるかしら?」
ミリーは、何故、急にそんなことを言い出したのだろう?
「もちろんでございます。そもそも、お嬢様が私に対して失礼なことなどされましたでしょうか? 私は、誰が見ても驚くような顔ですもの。お嬢様のお振舞いはごく自然なもの。どうぞ、お気になされませんよう」
私の返事に、満足そうに頷くミリー。
「ありがとう。『王族たるもの、例え身分の低い相手であろうと、傷つけるような言動をすることは許されない。お前がしたことは、まさにそれだ』と、王太子様は仰ったの。だから、私を王太子妃に迎えることはできなくなったんですって」
「まあ!」
王太子様は、そう説明したのか。
「でも、あなたがそう言ってくれるなら、私は王太子様に掛け合ってみようかしら? あの女優さんは、私のことを失礼とは思っていないんですよって」
王太子様が婚約破棄したのは、それだけが理由ではないのだと言ってあげるべきだろうか。
私が占った時、王太子様は、ミリーの性格に疑問を抱いていたような気がした。それに、私の目から見ても、ミリーの何もかも全て、王太子妃には相応しくない気がしてきた。
(こんな、身勝手な傲慢な子だったかしら……)
しかし、私の目の前で微笑むミリーは、相変わらず可愛くて優しげな女の子のままなのである。




