両親が恋しい
緊張しながら、カードを裏返していく。
偶然だろうが、ハートのカードが続いた。
(王太子様の心には、ミリーに対する愛はあるのね)
悔しいような、悲しいような。不思議な思いが、さざなみのように押し寄せてくる。
最後の一枚。
「スペードのエース」
どうして? 最後の最後に、こんな強いカードが出るとは。
どう答えたものか。
伯爵は、おそらくカード遊びなどご存じないだろうから、当たり障りのない慰め程度の言葉でも大丈夫だろう。
しかし、今この時も貴重な時間。復讐への第一歩なのだから。
伯爵に、思い切ってカードの本当の意味を告げてみよう。
「伯爵様、このカードが最後に出たということは」
私は、一旦そこで言葉を切った。
伯爵が大きく息を吸い込む。
「今までの、全てのカードを覆すような、良くない暗示ということです」
「何ですと!」
「スペードは暗黒のカード。並びによっては、最強な場合もあります。しかし、今回のように、王太子様のお気持ちを占って出てしまった場合は、破滅を表します。王太子様のご決断は変わることはないでしょう」
「おお……」
伯爵は、がっくりと肩を落としている。
「では、娘ミリアムが、正式な王太子妃になる望みはないということ?」
「現時点では。ただ、このようにハートのカードが並んでいますので、王太子様のお心は離れてはいません。大丈夫です」
大丈夫なんかじゃない、私にとっては。
腹立たしいことに、カード占いでは、王太子様がミリーを愛しているのは間違いないようだ。
伯爵は、ふと思いついたように言った。
「到着早々に占ってくれ、などと不躾なお願いでしたな。許してください」
「それは構いません。今回、私たちは短い滞在です。時間は貴重です」
明日はミリーの為に、明後日は領内の広場で領民のために、『王女クリスティーナ』の名場面を演じることになっている。
隙を見て、伯爵家の内情を調べたり、毒薬の入手経路を探ったり、出来る範囲で動き回るつもりなのだが。
(わずか三日間の滞在で、そんなことできる? 何をどうすればいいのだろう。ルークも、どうやって調べるつもりかしら)
執務室から出て、伯爵と共に、一座のみんなが待っている部屋まで戻ると、ルークを始めとして、みんな一様にホッとした表情を見せた。私が上手くやれるか、心配してくれていたのだろう。
「お待たせいたしました。占い師さんのお見立てでは、王太子様の娘に対する愛情は、まだ残っているとのこと。流れに身を委ねる覚悟で、見守ることにいたします」
伯爵のミリーに対する深い愛情を垣間見た気がして、私は両親に会いたくなった。
(お父様とお母様は、すぐ近くにいらっしゃる。会いに行きたいわ。でも、今回はそんな暇はないのだし。もう少し目処が立ったら、すぐにでも家に帰ろう)




