そして婚約は破棄された
結局、その夜は一晩中眠れなかった。
王太子様から聞かされた、ミリーに対する本当の気持ち。
そして、ルークの告白。
どちらも意外で、にわかには信じられないことだ。
特にルーク。
明日、私はどんな顔をして、彼に会えばいいのだろうか。
夜が明ける頃に、ようやくうとうとした私は、ドアをノックする音に飛び起きた。
「アナベル、起きてる?」
シシィだ。
「ごめんなさい。私、寝過ごしてしまったのね?!」
ドアを開けると、シシィが心配そうな顔をして立っている。
「大丈夫? もしかして、具合悪い?」
「あ、いいえ。昨日は……いろいろあったでしょ? なかなか寝付けなくて」
「なら、いいんだけど。さあ、朝食を食べて用意して、王宮へ行くわよ」
朝食の席には、ルークはいなかった。
王宮へ向かう馬車も、いつもなら私とルーク、シシィが一緒なのだが、今日はルークは後から行くとのことだった。
やはり彼も、私と顔を合わせるのは気まずいのだろう。私もそうだったから、少しほっとした。
しかし、このままずっと顔を合わさないわけには行かない。早めに彼と、今後のことを相談しなくては。
私の今後は、全てにおいてルークの協力が必要なのだ。
王宮に到着すると、あちこちで人が固まって話をしていた。
貴婦人方は、扇で口元を押さえ、ヒソヒソと囁き交わしている。眉をひそめて。
「何かしら。異様な雰囲気ね」
シシィが「様子を見てくる」と言って、人々の輪にさりげなく近づいて行った。
しばらくして戻ってきた彼は、満足した様子で教えてくれた。
「ミリーが今朝早く、田舎の伯爵家の領地に行ったんですって。しばらく、そちらで静養するとか。詳しい事情はわかんないけど」
更に、
「王太子様は、ミリーを王太子妃ではなく、側妃として指名するみたいよ」
と言うではないか。
「それ、ほんと? ということは、昨日あれからすぐ、王太子様はミリーに婚約破棄を告げたのね」
胸がどきどきする。これは、嬉しさから来るものなのか、何なのか。
「あなたの占いを真に受けてかどうかはわかんないけど、一矢報いたって感じかしら。よかったわね、アナベル!」
「問題はこれからね。どうやって、ミリーに自白させるか。とにかく、事態は私にとって有利なほうへ動き始めたってことよね」




