表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/106

面罵されて

 翌日、私たち一行は、再度王宮に乗り込んだ。

 私たちの芝居を楽しみにしてくれている貴族も多く、会場となっている広間は既に大盛況である。


 私も度胸がついたのか、自分の真の姿を知られる心配より、上手く演技できるかどうかだけが心配だった。

 おそらく芝居の後、王太子様は私をお呼びになるだろう、 『占いを見せてくれ』と。

 今日は、芝居も何もかも、失敗するわけにはいかない。


 だが、私は少々楽観視していた。

 昨日、占いを間近に見せてもらい、おおよその手順は覚えた。占い師の老人は、カードの意味を纏めた薄い冊子もくれた。彼からのアドバイス、それは、『自分は占い師だと思い込むことが大事』ということだった。


 いよいよ芝居が始まる。

 王太子様とミリーは、最前列で座っている。


 今日の演し物(だしもの)は、初っ端から私がメインの芝居である。

 占い師の予言により、追い詰められる王とその妻の人間劇に、観客が固唾を飲んでいるのがわかった。


 私も、肩に力が入ってしまっていたのだろう、ヴェールがずれてしまった。明るい日の光が私の顔を照らした瞬間、ミリーが悲鳴を上げる。


 (しまった! 気づかれた!?)


 慌てて、ヴェールを頭から被り直したが、ミリーが嘲るように言った。


「怖い、なんておぞましいの! あの老婆の顔!」


 私の正体に気づいたのではなく、右目の周辺に浮かび上がる青あざを見て、彼女は叫んだのだった。


 私は深く傷ついた。立っていられないほどの衝撃を受けていた。


 その時、脇で見守ってくれていたルークが、小走りで “舞台” に現れた。

 彼は私の肘のあたりを掴むと、背中のほうから支えてくれる。


「ルーク……」


 弱々しく言う私に、ルークは、

「しっかりしろ」

 励ますように囁くと、広間にいる貴族たちに向けて叫んだ。


「卑しい身分の老女といえど、占い師も一人の女性です。顔のことを言われるのが、どれほど辛いことか。皆様、お察しください」


 ざわついていた広間は、一瞬にして静まり返った。

 やがてあちこちで、御婦人方が囁き交わす声が聞こえてきた。それは声というより雑音。


「たしかに、その通りですわ。顔のことを、とやこう言うのは下品」


「王太子妃も、残酷な物言いですわね」


「あの方は “あれ” ですもの。失礼なことも、平気で言えるのですわ」


「そうね。お生まれが卑しいから、仕方のないことかも」


「聞こえますわよ、皆様」


 澄まして言う御婦人方の言葉が、ミリーに聞こえないはずがない。むしろ、ミリーに聞こえるように、彼女たちは言っているのだから。


 ミリーの顔は、見る見るうちに赤くなってきた、面白いほどに。


(想像以上に、ミリーは嫌われているのね)


 彼女の出自は、自分ではどうしようもないことだが、私から王太子様を盗んだことは、思ったよりも世間の反発を買っているのかもしれない。

 王太子様の顔をそっと盗み見ると、色白の彼の顔は紅潮し、体はぶるぶる震えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ