墓所
悪い夢を見ている。
親友のミリーが、とても意地悪な目をして私に囁いている。
『気分はどう? このワイン、とても素敵な薬が入っているの。大丈夫、これからは私があなたの代わりになるから、安心しておやすみなさい、永遠に』
「はっ!」
目覚めた私は、真っ暗な闇の中にいた。
まだ夢を見ているのだろうか?
頭が痛い、ズキンズキンと脈打つように。
しばらく目を凝らしていたら、ぼんやりとだが辺りが見えてきた。
目が慣れてくると同時に、カビ臭い匂いに吐きそうになる。
「ここは何処なの? 誰か、誰か助けて!」
叫びながら上半身を起こした瞬間、めまいがしてバランスを崩し、床に転がり落ちた。
砂埃のようなものが巻き起こり、私は激しく咳き込んだ。何かがバサバサと音を立て、私の体や地面に落ちてくる。
「いやあ!」
必死で払いのけると、甘酸っぱいような生臭いような匂いがした。落ちてきたのは、たくさんの花だった。
ひんやりとした冷気に、全身がぶるっと震える。
信じられないことだが、どうやらここは墓所のようだ。
嫌でも、たくさんの寝台に横たわる骸骨の姿が目に入ってくる。美麗な衣装をまとい、箒の先のようなパサパサの髪の毛が僅かに残っている。
気づくと、私は嗚咽を漏らして泣いていた。
出口を求め、なるべく周囲を見ないようにして歩き始めた。
「お願いよ、誰か助けて。助けて!」
私の泣き声に呼応するかのように、さっと背中に冷たい風が吹いてきて、うめき声が聞こえた気がした。
「いやああ!」
走ろうとするが、足が思うように動かない。何とか、よろけながら光を求めて歩く。霊廟の出入口に辿り着いた時、陽光の眩しさに目を閉じた。
再び目を開けた時、すぐ近くに、誰かいるのに気づいた。
「誰だ? そこにいるのは!」
男性の声がする。




