占いを学ぶ
ジプシーの男性は、次に水晶の珠に手をかざした、じっと私を見つめながら。
その目は、何というか。そう、まるで蛇が獲物を見つけて舌なめずりする、とでもいったような目。
彼は、今度は水晶に視線を移し、猫を撫でるような仕草で、それを覗き込む。
その間、私は彼の様子を観察していた。
「わかったぞ、お嬢さん。あなたが欲しいものは権力者の愛情じゃな。おめでとう、それは手に入れられる」
えっ? と顔を上げた私は、彼の顔を見る。
彼は黄色い歯を剥き出し、ニヤッと笑った。
「花嫁姿のあなたが、立派な男性と教会で手を取り合っているのが見えた。カードもハートの女王だったし。あなたが、女王と呼ばれる未来が来るのは間違いない」
「本当ですか?」
私は身を乗り出した。思いのほか良い結果に、私は疑いつつも嬉しかった。
「……と、まあ、こういう感じで占うのじゃ。お嬢さん、あなたはなかなか見込みがあるぞ。わしを観察していた態度は、かなり本気だったのう」
彼は、そんなふうに褒めてくれた。
しかし、では、さっきの占いの結果は適当だったのか。
「そうじゃよ。適当も適当。全くの出鱈目とは言わんが、いい加減なもんさ」
「えっ? そうなんですか」
私は少しがっかりした。
ルークは、そんな私の態度を、興味深そうに眺めている。
占い師の男性は、帰り際に、
「わしの水晶玉をお嬢さんに贈呈しよう」
そう言って、水晶玉を私にくれた。
「いいのですか? こんな貴重なものを」
「ああ。わしは、最近新しい玉を手に入れてな。これはもう、用済みになったんじゃ」
「でも、今日お会いしたばかりなのに。お弟子さんとかご親戚とか、欲しい方がいらっしゃるのではないですか?」
他人の、しかも私みたいな素人が貰ってよいものだろうか? 使いこなせる自信もないけど。
「弟子なんぞおらん。古くなった水晶玉は、土に帰すだけさ。それなら、必要とする人に差し上げたいと思った。あなたには、何か成し遂げたいことがあるのじゃろう? それも、大きな相手に対する復讐じゃな?」
言い当てられて、私は大きく頷いた。
「何故か、あなたを手助けしたくなった。こんな占いが役に立つのかどうかわからんが、あなたの目的が見事達成されるよう、わしらの神に祈っておこう」
「爺さん、ありがとう。遠慮なく貰っておく」
ルークが、私と老人の会話に割って入り、私を見てにんまりする。
老人が帰った後、ルークは言った。
「爺さんには、心付けを弾んでおいたが、まさか水晶玉をくれるとは思わなかったよ。でも、よかったじゃないか。水晶玉を持つあなたは、ホンモノの占い師に見えるぞ」
もしかして、占いを教えてくれるお礼として、ルークは気前よくお金を払っておいてくれたのか。
「ルーク、ありがとう。明日は頑張るわね!」




