ティーパーティ
「名誉なことね! 初めてよ、パーティに参加できるのなんて」
「そうか? 前もあったぞ」
「トラヴィスは、私たちよりずっとお爺さんだから、記憶が曖昧なんじゃないの?」
笑い合うシシィとトラヴィスをはじめ、グラン・ボヌール一座はティーパーティの中でも、ひときわ異彩を放っている。特にルークは、この広間にいる人たちの中で、最も魅力的な男性だと言えるだろう。
長身で引き締まった体つき、長めの髪を後ろでひとつに束ねている姿は、物語の中から飛び出して来たみたいだ。本物の王子様よりも、王子らしさを醸し出している。
私は横目で、王太子様を見た。彼は、ミリーと並んで、招待客と談笑している。
かつて、あんなに素敵だと思っていた王太子様が、何故かくすんで見える。全く魅力を感じない。もちろん、相変わらず上品で美しいお顔をしていらっしゃるのだが……。
王太子様と目が合った。
いや、正確には、彼が私のほうを見ているような。
じっと見つめてくる彼の視線に、(バレた!?)と、一瞬不安になったが、ヴェールを被っている私の顔は認識できないだろう。
ミリーは、招待客と何やら話し込んでいる。
おもむろに、王太子様がツカツカとこちらに向かって歩いて来た。
(どうしよう! まさか私に気づいたなんてことはないわよね?!)
「失礼、少しお話できますか?」
「わ、私でございますか?」
「ええ!」
王太子様は、目をキラキラ輝かせて言う。
「占い師さん、素晴らしい演技でした!」
王太子様は、誰もが好きにならずにいられない笑顔を見せつけてきた。
さっきは、『全く魅力を感じない』って思ったけれど、間近にお会いすると、やはり胸がギュッと締め付けられる思いがする。
この方は、私のものだったはずだから。
「ありがとうございます、王太子様……」
ミリーとはいつから?
どちらが先に誘ったの?
あなたは、私を裏切って平気だったの?
そして。
私の毒殺に、あなたは関与しているの?
「ああ、一座の皆さんも、ようこそ! 素晴らしい舞台をありがとう」
振り向くと、ルークたちが私の後ろに集まっている。
「ありがたき御言葉。私どもこそ、お招きに預かり光栄にございます」
ルークの挨拶は完璧だ。
しかし、言葉とは裏腹に、彼の目は無礼なまでに鋭い。王太子様を睨みつける、といってもいいほどに。
「こちらの占い師さんは、本当に占いが出来るのですか?」
王太子様は、ルークの敵意に気づかない様子で質問してくる。
「え? まあ、自慢できるほどではありませんが」
「ルーク!」
私は占いなどできないのに、彼は何を言ってるんだろう。
王太子様の期待に応えたくなったとでも?
「早速、腕前を見せていただきたいですわ」
ミリーの声が響いて、彼女が悠々とこちらに歩いて来る姿が見えた。




