王宮からの招待②
「ルークは結婚しないのかしら?」
「さあて、どうかな。もう親兄弟もいないし、親戚たちも離れて暮らしているから、気楽といえば気楽な身だからなあ。以前は、夜を一緒に過ごす女もいっぱいいたみたいだが。そういや、最近は夜に出歩くことも無くなって、仕事しかしてない」
『夜を一緒に過ごす女もいっぱいいた』ですって!
健康な男性だもの、仕方ないわね。ましてや、あの見た目だし。女性にはモテるでしょうね。
何より、困ってる人を見捨てない優しさ、仕事熱心で一座を率いるリーダーシップ。
周囲から尊敬される人よね……。
「ーーちゃん、嬢ちゃん」
私は、アルフォンソ老に呼ばれていたことに、しばらく気づかなかった。
「あ、はい。ごめんなさい、何か」
「ルークは、次の芝居を嬢ちゃんに任せる気だが、どうだい、やれそうかい?」
そうだった。私は、春の花祭りから舞台に立つことが決まっている。
不思議と緊張感はなく、やれそうな気がしている。
「やってみないとわからないけど、精一杯頑張ってみます!」
そして訪れた “花祭り”の初日。
国の至る所で、祭の飾りがされて、人々は浮き足立っている。長い冬を終え、雌伏の期間を終えた私も。
毎年、ひと月近く続く花祭りの間は、貴族たちは入れ替わり立ち替わりホワイティ・エリーズ王宮を訪れ、楽しく過ごす。
同時に、自分たちの領地の状況を報告し、運営に関して相談したりする政治の場でもある。
今、私とルーク、アルフォンソ老は王宮の大広間に立っている。明日から一週間、グラン・ボヌール一座はここで芝居をすることになっている。
毎年、オペラ座の芝居が行われているのだが、今年は王立オペラ座ではなく、グラン・ボヌール劇場が選ばれたのは何の因縁か。
「俺の記憶では、今回が二度目なんだ。一度目は、もう随分前、父の時代だった。うちに声が掛かるなんて、今まで無かったからな」
「そうだったの。王宮での演劇は、私は見たことないけど」
もし、私が順調に王太子妃になっていたら、毎年のように観劇できたのかしら。
そうだ! ミリーは? ミリーはいる?
どきどきしながら、王宮の広間を見回した。
「どうした? 何を探してる?」
「あっ、いいえ。知り合いがいないか、気になって」
「いても大丈夫だ。今のあなたはグラン・ボヌールの女優。エトワールのつもりで、周りの目は気にするな」
ルークは余裕の笑みを浮かべた。




