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鮮やかなドレス

 ルークの言葉に励まされた私は、再び朝食を食べ始めた。


「アナベル、食事を終えたら劇場を案内するよ。丁度、新作の稽古の真っ最中だし」


 私は、ルークの提案に歓喜の声を上げた。


「是非! 劇場の裏を見ることなんて出来ないもの、嬉しいわ。あっ、でも」


「でも?」


「ごめんなさい。わがままだとは思うんだけど、私のドレス、もう着られない。着たくないの」


 私が理由を説明する前に、ルークが「ああ! そうか」と、大きく頷いている。


「豪奢なドレスだが、これは死者のドレスだ。俺としたことが……。何故、そんなことに気づかなかったんだ。アナベル、劇場の衣装で良ければ、ドレスはたくさんある。まずは衣装室にご案内しよう」


 ルークの案内で、地下の他の部屋も見せてもらうことになった。


「ここが衣装室。グラン・ボヌール設立当時からの衣装もある。毎年、虫干ししているから綺麗なもんだ」


「グラン・ボヌール設立っていつ?」


「凡そ百年前かな」


「そんな昔からあるの!?」


「しかし、公爵家令嬢を、こんなバックヤードにご案内する日が来ようとは」


 ルークは、部屋を埋め尽くしているドレスの中から、一枚を指さした。


「これなんか、どうだ? 鮮やかなターコイズブルーは、きっとあなたに似合うはずだ」


「素敵だわ! 本当にいいの? こんな貴重なものをお借りして」


「これは比較的、新しいものだ。シシィのために用意したが、丈が合わなくて、一度も舞台では使われていない」


 そう言いつつ、ルークはドレスを次々に選んでいく。


「これも、誰も着ていないな。おっと、これも」


 あっという間に、私の前にはドレスが積み上げられていた。


「ドレスも、美貌の公爵家令嬢が着てくれたら嬉しいんじゃないか?」


「まあ! ありがとう。今日は早速、このターコイズブルーのドレスをお借りするわ」


 私がドレスに着替えて、廊下で待っているルークを呼ぶと、彼は「アナベル!」と叫んだ。

 彼の感に堪えないような声に、私のほうが驚いてしまう。


「思ったとおり、よく似合っていて美しい! 気品といい、理想の王女そのものだ」


「理想の王女?」


「グラン・ボヌール一座の十八番(おはこ)、『王女クリスティーナ』のヒロインだよ。彼女は、恋人への愛のため、国を守るため、勇敢に闘う女性なんだ。今のアナベルは、その理想のヒロインにしか見えないよ」


 ルークが熱っぽく説明する。


「何だか、クリスティーナに申し訳ない気がするわ」


 私が照れると、ルークは笑って首を横に振った。


「さてと。では、劇場のほうに移動するか」

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