衝撃的な話
「朝食は食べられそうか?」
「昨夜のチキンスープなら」
「わかった、お安い御用だ。早速持ってこよう」
ルークは、そう言って出て行った。
なんだか不思議だ。
彼と一緒にいると、明るい気持ちになって、とても気楽に喋ることが出来る。自分の素直な気持ちを曝け出すことも出来る気がする。
ルークがお盆を手に、再び部屋に戻って来て、私のためにテーブルセッティングしてくれた。
「デザートもある。オートミールとドライフルーツ入りヨーグルトだ」
「素敵! ほんとうにありがとう。こんなによくして頂いて、なんてお礼を言えばいいのかわからないわ」
「お礼なんか、気にするな」
「いずれ家に帰ったら、お父様に、グラン・ボヌールのパトロンになってくれるよう、お願いしようかしら」
「お父様といえば。今朝早く一座の人間に、ウィスハート家のご様子を見に行ってもらった」
「えっ?」
「ご両親とも、お嘆きが深く、空気の良い地方に静養に行かれたそうだ」
「そうなの……。ありがとう、教えてくれて」
「それと。言いたくないが、王太子とミリアム嬢は、既に一緒に暮らしているとのことだ」
私はびっくりして、スープを食べる手を止めた。
「二人が一緒に? ど、どこで」
「王宮内だろう」
「信じられない! この目で確かめないと」
私は勢いよく立ち上がったが、めまいがして、しゃがみ込んだ。
「アナベル! すまない、つまらないことを耳に入れてしまったな」
「いいえ。もっと二人の様子を知りたいわ。でないと」
「でないと?」
「疑惑が晴れないから」
「何の疑惑だ?」
私はルークに、私に毒を盛って殺そうとしたのはミリーかもしれない、ということを話した。
「なるほど。情況から鑑みて、ミリアム嬢しかいないというわけか」
「でも、ミリーは幼い頃からの親友なの。とても優しくて、心の綺麗な子なの」
ルークは黙って、私の話を聞いてくれている。
「王太子様も、私をとても大切にしてくれていて、好きだと言ってくれたことだってあるのよ。それなのに、私が死んですぐ二人が婚約して、早々に一緒に暮らし始めるなんて! 信じられない!」
「アナベル、人の心は複雑だ。親友と思っていたのは自分のほうだけだった、なんてことはよくあることだ。恋人と思っていた人に、他に女がいるなんて、それも当たり前のようにある」
私が頭を抱え、ソファに倒れ込んだのを見たルークが、諭すように話し始めた。
「もちろん、逆の考え方も出来る。愛する人を喪って、慰め合う為にくっつく男女なんてのも存在する」
「慰め合う為に?」
「共通の友人が死んで、故人を偲んで思い出を語り合ううちに仲良くなり、結婚した夫婦を俺は知っている」
「そんなこともあるの?」
「それだけ、人の心は複雑怪奇なんだ。さあ、これを食べて元気を出せ。何か行動を起こすにしても、とにかく健康でなければ」




