蘇って、一夜明けて
翌朝目覚めた時は、体じゅうに力が漲ぎっていた。
(今、何時かしら。ずいぶん長い時間、眠っていた気がする)
悪夢の記憶はなく、ただただ気分がいい。
私はベッドから降りて、着替えることにした。
ルークたちは『一日、寝ていろ』と言ってくれたけど、そうすると本当の病人になってしまいそうな気がして。
しかし、ベッドの近くに、綺麗に畳まれているドレスを見た私は、ぞっとした。
薄い紗のヴェール、白と薄紫の布を組み合わせた美しいドレスは、まるで冥界の花嫁のようで、私に墓所の霊廟を思い出させた。
(だめだわ、二度とこの服は着られない!)
このドレスは、私が王太子妃になる予定で、あらかじめ作られていたもの。いわば、嫁入り道具のひとつだった。
両親が私のために、たくさん準備してくれたドレスの中でも、最も高価で豪華なものだ。
(それが私の死装束になるなんて!)
私は唇を噛み締め、父と母の顔を思い浮かべる。自然と、ドレスを持つ手に力が入る。
(一体、誰が私に毒を盛ったの? あのシチュエーションだと、私に毒を飲ませたのは、ミリーだけれど。私が倒れる寸前、口にしたのはミリーのくれたワインだけだし)
でも、信じられない。信じたくない。
子供の頃から仲良しのミリー。
彼女が、私を殺そうとするなんて。
あの優しいミリーが!
もしかしたら。
ミリーは、ワインに毒が仕込まれているのを知らずに、私に勧めてきたのかもしれない。そうよ、きっとそう。
だとしたら、今頃ミリーは嘆き悲しんでいるに違いない。
それだけじゃなく、彼女も命を狙われたりしないかしら?
でも、誰が私を殺そうとするの? 私が王太子妃になったら困る一派でもいるのだろうか?
それは考えすぎよね。
何故なら、ウィスハート公爵家は、元々王家の一族。実は、私の曽祖母の妹に当たる人も王妃だった。
頭の中がぐちゃぐちゃで、何が何だかわからなくなってきた……。
コンコン、と控えめなノックの音に気づいて、私は背筋を伸ばす。
「誰かしら? どうぞ」
私が鍵を開けると、素早く扉が押し開けられ、ルークが滑り込んできた。
「ルークだったの、おはようございます」
「おはよう、姫君!」
ルークは例の、眩しそうな目をして私を見た。
「お元気そうだ。顔色もいい」
その瞬間、私は顔を隠す。
すっかり、顔のあざのことを忘れていた!
ルークは、右頬に置いた私の右手を取り、そのまま自分の口元に持っていくと、手の甲にキスした。
「ルーク!」
とがめる私に、
「ご挨拶のキスだ」
と笑う彼に、私もつられて笑ってしまった。
「その様子だと、顔の痛みも無くなったようだな?」
「ええ、顔のこと、今の今まで忘れていたわ!」




