表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/106

蘇って、一夜明けて

 翌朝目覚めた時は、体じゅうに力が(みな)ぎっていた。


(今、何時かしら。ずいぶん長い時間、眠っていた気がする)


 悪夢の記憶はなく、ただただ気分がいい。

 私はベッドから降りて、着替えることにした。

 ルークたちは『一日、寝ていろ』と言ってくれたけど、そうすると本当の病人になってしまいそうな気がして。


 しかし、ベッドの近くに、綺麗に畳まれているドレスを見た私は、ぞっとした。

 薄い紗のヴェール、白と薄紫の布を組み合わせた美しいドレスは、まるで冥界の花嫁のようで、私に墓所の霊廟を思い出させた。


(だめだわ、二度とこの服は着られない!)


 このドレスは、私が王太子妃になる予定で、あらかじめ作られていたもの。いわば、嫁入り道具のひとつだった。

 両親が私のために、たくさん準備してくれたドレスの中でも、最も高価で豪華なものだ。


(それが私の死装束(しにしょうぞく)になるなんて!)


 私は唇を噛み締め、父と母の顔を思い浮かべる。自然と、ドレスを持つ手に力が入る。


(一体、誰が私に毒を盛ったの? あのシチュエーションだと、私に毒を飲ませたのは、ミリーだけれど。私が倒れる寸前、口にしたのはミリーのくれたワインだけだし)


 でも、信じられない。信じたくない。

 子供の頃から仲良しのミリー。

 彼女が、私を殺そうとするなんて。

 あの優しいミリーが!


 もしかしたら。

 ミリーは、ワインに毒が仕込まれているのを知らずに、私に勧めてきたのかもしれない。そうよ、きっとそう。


 だとしたら、今頃ミリーは嘆き悲しんでいるに違いない。

 それだけじゃなく、彼女も命を狙われたりしないかしら?


 でも、誰が私を殺そうとするの? 私が王太子妃になったら困る一派でもいるのだろうか?

 それは考えすぎよね。


 何故なら、ウィスハート公爵家は、元々王家の一族。実は、私の曽祖母(ひいおばあさま)の妹に当たる人も王妃だった。

 頭の中がぐちゃぐちゃで、何が何だかわからなくなってきた……。


 コンコン、と控えめなノックの音に気づいて、私は背筋を伸ばす。


「誰かしら? どうぞ」


 私が鍵を開けると、素早く扉が押し開けられ、ルークが滑り込んできた。


「ルークだったの、おはようございます」


「おはよう、姫君!」


 ルークは例の、眩しそうな目をして私を見た。


「お元気そうだ。顔色もいい」


 その瞬間、私は顔を隠す。

 すっかり、顔のあざのことを忘れていた!


 ルークは、右頬に置いた私の右手を取り、そのまま自分の口元に持っていくと、手の甲にキスした。


「ルーク!」


 とがめる私に、

「ご挨拶のキスだ」

 と笑う彼に、私もつられて笑ってしまった。


「その様子だと、顔の痛みも無くなったようだな?」


「ええ、顔のこと、今の今まで忘れていたわ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ