危険な男?②
ルークは私を立たせると、ウインクして微笑んだ。
「だが、俺を信じてくれて嬉しかったよ。あなたの信頼に応えるというわけではないが、何があろうと、あなたを支えて助けてあげたいと思っている」
彼は、おもむろに書き物机に向かうと、立ったまま何か書き始めた。
その時、ドアをノックする音がして、シシィが入って来た。
「お嬢様、スープは全部飲めた? ちょっとベッドメイクさせてもらうわね。……どうかした?」
シシィは、私とルークを見比べて、何かあったと察知したみたいだ。
「ルークったら。ははーん、何かやらかしたわね。で、良いネタでも思いついたとかなんでしょ。ルークが、この状態になってしまったら、もう放っておくしかないわ。お嬢様、ネグリジェとガウンよ。悪いけど、廊下に出て着替えてくれる? その間に、シーツを替えておくから」
私は頷いて、温かそうな布地の寝巻を受け取り、廊下に出た。
薄暗い廊下はとても寒くて、着替える間じゅう、私はがたがた震えてしまった。
この震えは寒さだけではなく、この世は危険がいっぱいということを、身をもって知ったこともあるのだろう。
同時に、さっきルークの温かな腕に包まれた時の心地良さや、思いやりのある言葉が、私を慰めてくれているのも事実なのだ。
着替えて部屋に戻ると、シシィが手際良くベッドのシーツを替えてくれていた。
ルークは机に向かい、真剣な表情でペンを走らせている。
「ルーク」
シシィの呼びかけに無反応のルークを見て、シシィは小さく舌打ちした。
「ルーク!!」
シシィが、大きな声でルークを呼ぶと、ルークが驚いたように顔を上げた。
「ルーク、ベッドの用意が出来たから、あたしたちは出て行かないと」
「あっ、ああ。そうだな。よし」
ルークは夢から覚めたように、のろのろと椅子から立ち上がると、机の上の紙の束を掴み、私に微笑みかけた。
「おやすみ。明日は一日中ゆっくりしていること。とにかく休息が大事だ」
「そうね、お嬢様はずっと寝てなさい。お食事は、あたしが持ってくるから。用があったら、遠慮なく呼んでちょうだい。あ、そうそう、この部屋は内側から鍵が掛けられるからね、安心して」
「シシィ、誰も侵入したりしないだろ」
「あんたが一番危険なのよ」
「俺? 馬鹿にするな、俺はそんな下劣な人間じゃないぞ」
「はいはい、わかってますよ。わかったから、とっとと出て行って」
シシィに追い立てられるようにして廊下に出たルークは、振り返ると、私に投げキスしてきた。




