表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/94

危険な男?

 私を見るルークの視線に憐れみを感じる。


「大丈夫、全然大丈夫よ。このスープ、美味しいわねえ」


 へこんでるなんて、悟られてはならない。

 公爵家令嬢たるアナベル・ウィスハートは、こんなことで……。


「あなたたちのご親切、私は終生忘れないことを誓いますわ」


 ルークは、白い歯を見せて笑った。


「大袈裟だな」


「いくら私が公爵家令嬢と知っていても、無礼な真似を平気で出来る輩もいるでしょう。でも、あなたはそうしなかった。私の頼みを聞いて、匿ってくれて」


「信用するのはまだ早いぞ」


「え?」


「俺が無礼な真似をしないと言い切れるか?」


 ルークは先程までとは違う、邪悪な笑みを浮かべて言った。


「『飛んで火に入る夏の虫』というだろう? 獲物のほうから飛び込んで来てくれるなんて、千載一遇の大チャンスだ。こんな上玉、みすみす手放すわけないだろう?」


「ルーク? 何言ってるの?」


 私の言葉など聞こえない様子で、彼は舐めるように私の全身を見て、一歩私のほうに身を乗り出してきた。


「ルーク!」


 さっきまでの穏やかな紳士的な雰囲気は消え、彼は今や危険な男に変貌していた。


「ルーク、冗談でしょう?」


 私はソファから立ち上がり、じりじりと後ずさる。しかし、すぐに衣装櫃(タンス)に足が当たり、その場にくずおれてしまった。


「アナベル!」


 ルークが(ひざま)ずいて、私を助け起こしてくれようとしたが、私は思い切り彼の手を払いのけた。


「アナベル、聞いてくれ」


「いやっ! 放して! その汚らわしい手を。放して!」


 私は目を閉じ、両手を闇雲に振り回して、彼を拒絶する姿勢を示した。


 不意に、ふんわりと温かいものに包まれた気がして目を開ける。ルークの顔がすぐ近くにあり、彼の手は片方は私の頭に、もう片方は背中にあった。


「すまない、驚かせてしまって!」


 ルークの眼差しは優しく、彼の手はそっと私の頭を撫でている。


「ルーク……?」


「この世には、信じられないような悪人が存在する。そのことだけは知っておいてほしいんだ。あなたのようなレディには、想像もつかないことだろうな。さっき、俺がやったような無礼な真似を平気でやる輩なんて、いくらでもいるんだ」


 今更だけれど、ゾッとした。よく知りもしない人に助けを求めて、ノコノコとついてきて。

 私は無防備で愚かすぎる。


 ルークが、彼の言う “信じられないような悪人” だったとしたら、私は今頃どうなっていただろう。

 考えたくもないけど、さんざん弄ばれた挙句、売り飛ばされていたかもしれない。なんておぞましい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ