ミリーの自白②
「やっぱり、あなたは伯爵様に操られていたのよ。洗脳っていうのかしら?」
私がドクターを見ると、彼も同意するように頷いてくれた。
「伯爵夫人ことリュドミラ夫人は、今どこにいるの?」
「そこまで知ってるの!」
「さっき、執事も認めたわ。伯爵夫人は偽物だって。つまり、リュドミラ夫人が伯爵夫人になりすましてたってことよね?」
「そうよ。いつのことだか、はっきりと覚えてはいないけれど、静養に訪れた時のこと。領館の隠し部屋で、伯爵夫人が亡くなっているのを私は見つけてしまったの。リュドミラ夫人とかくれんぼしてて……」
「領館にも隠し部屋があるのね」
私は王宮の地下部屋を思い出した。あんな陰鬱な場所で、私が幽霊に扮するなんて恐ろしい計画を実行しなくてよかったわ!
「リュドミラ夫人は、伯爵夫人のご遺体を前にして言ったの。『今日からは、私が伯爵夫人になります。よろしくね』って。怖かったけれど、同時に私は嬉しかったわ。私の存在を無視している伯爵夫人でなくて、大好きなリュドミラ夫人がお母様になってくれるんだもの」
「ミリー、子供の頃、あなたが私に紹介してくれたお母様って、リュドミラ夫人だったの?」
「そうよ。彼女は、あなた以上に変装が得意な人なの。どんな薬や化粧品を使っているのか知らないけれど、顔立ちも変わるほどのメイク上手なのよ」
「顔つきまで変わるメイクなんてあるのかしら? なんだか信じられないわ」
「彼女は、あなたと同じ綺麗な黒髪も、染料を使って金髪に染め直していたのよ。……今、気づいたけれど、私の実母と伯爵夫人って、髪色や肌色が同じだわ」
私は笑った。
「伯爵様の好みのタイプなのかしら」
ミリーは、ようやく笑顔を浮かべた。
「あなたも伯爵様も、リュドミラ夫人に操られていたのよ。で、ご遺体をあんな所に隠したのは誰? 何の目的で?」
「お父様か、誰か使用人だと思うわ。リュドミラ夫人の指図よ。おうちに高貴な人の遺体を隠して埋めておくと、その家は繁栄するそうよ。リュドミラ夫人が言ってた」
「なんて怖い! それは、夫人のお国の風習かしら?」
「そうなのかしらね。……アナベル、許してとは言わないわ。でも、お腹の赤ちゃんだけは許してちょうだい」
私は怒る気にもなれなかった。目の前で打ちひしがれている、かつての親友の姿を見ると何も言えなくなる。
「お邪魔して、よろしいでしょうか?」
騎士団長の声がした。
「アナベル様、そこで伯爵家の医師を捕まえましたので、お城の方へ移動いたしましょう」
「あの医師を?……わかりました。リュドミラ夫人のほうは?」
「それが。使用人たちに聞いても、誰もわからないと言うばかりで」




