ミリーの自白
ミリーの顔が歪み、彼女は目を見開いた。何度か瞬きし、私と目が合うと叫んだ。
「アナベル! 何故ここにいるの?」
「何から話せばいいかしら。今、あなたのお父様が王宮にいらっしゃるのは知ってるわよね?」
「もちろん。お父様はどうなったの?」
「伯爵様は王宮で倒れられて。その後どうなったのか、わからない。私はあなたのことが心配で、とりあえず駆けつけたの」
ミリーは、暗い顔つきだった。
「私たち伯爵家は、もう終わりよね?」
「それは何とも。国王陛下と王太子様が判断することだから。それに、あなたのお腹には、未来の国王になるやもしれない御子がいるのだし」
「それだけが希望だわ。……私も、お城へ行ったほうがいい?」
「あなたは具合悪そうだから、ここにいたほうがいいわ。陛下も、無理は仰らないはず。そして、赤ちゃんが生まれるまでは、信頼できる誰かについていてもらって」
「信頼できる誰か」
ミリーは、遠い目をして呟く。
「そんな人いないわ。あなたには素敵なご両親がいるし、あの劇場の支配人もいる。でも、私には誰もいない。やっぱり、私はあなたに勝つことができなかった」
「勝ち負けの話じゃないでしょうに。そんなことより、本当の気持ちを教えて。あなたが私に毒を飲ませたのは、自分の意志じゃないわよね? そもそも、あなた、本当に王太子様のことを好きだったの?」
「王太子様のことを嫌いな娘なんていないでしょ」
ミリーの投げやりな口調に、私は笑った。
「そうね。何も知らなかった頃の私は、王太子様のことをお慕いしていたわ」
「今は、あの男性に夢中ってわけね。でも不思議。あんな身分の男性のこと、本気で好きなの? 私には考えられない」
私たちの傍で、黙って会話を聞いていたドクターが目を剥いた。
「お嬢様は何もわかっちゃいねえなぁ。この国、いや、世界中を探したって、ルークみたいないい男はいねぇよ。それに、あいつは隣国の貴族出身だよ?」
今度は、ミリーが目を剥く番だった。
「ドクター、ありがとう。私も、ルークは世界で一番素敵な人だと思うわ。でも、これは私が彼に助けられて、フラットな目で物事を見ることができるようになったから言えることなの。……ミリー、もう一度聞くわ。あなたはあなた自身の意志で、私を殺そうとしたの?」
「……わからない。毎日毎日、お父様とお母様から、『アナベルが邪魔だ、アナベルがいなければ王太子妃になれるのに』そう言い聞かせられているうちに、私はあなたのことが憎くてたまらなくなっていったのよ」
私は、ミリーの発した言葉の刃で、胸を抉られたような気分になる。
「毒薬は、誰に貰ったの?」
「お母様よ。でも、実際に用意したのは、あのリカストワ一族の医師だと思うわ」




