表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

第二話 有効か無効か? 青少年健全育成

 ――スカートの中から見えているのは、下着ではなく、その上に着用する厚手のインナー、紺色のオーバーパンツである。恵萌(めぐも)が今言ったとおり、これも一種のブルマーだ。

 女子高生・恵萌にしてみれば、いい年をした中年男性が、この程度でドギマギしている(さま)は、情けなく思えるのかもしれない。


 とはいえ、無防備にスカートをめくり上げる仕草は、決して、お行儀のよいものではない。

 また、男性というのは、女性のスカートがめくれそう・めくれているという、その光景自体に、そわそわと気まずくなる性質があるのだ。これはなかなか、女性には分かってもらえないのだけど……。


 龍輝(りゅうき)は、短髪の頭をボリボリかいて、

「あのさあ、恵萌。もっと、恥じらいとかさ……」

 龍輝は、背広姿だ。低い声は、笑ってはいるが、かすれていた。内心、かなり動揺している証拠である。

 それに気づいたのか、

「えーっ、そんなにイヤ?」

 大きな両眼のうち、左目を細める。長いまつ毛。

 手を放したら、スカートの(すそ)が、バサッと下へ戻る。長さは、膝小僧の上あたり。ブルマーは、すっぽり隠れた。

「パンツじゃないのに」

「パンツとか言うな」

 即、龍輝のツッコミ。

 恵萌は、プッと噴き出してから、

「ここにいる時は、性欲とか起こらないって、言ってなかったっけ?」

「そりゃあ、言ったさ。実際、そうだしな」

 龍輝はうなずく。

 恵萌みたいな美少女と、中年男の自分が、毎日、二人きり。普通なら、おかしくなるところだろう。

 しかし、「ここ」は、普通の場所ではない。正体はまだ不明だが、超常的な世界であることは確かだ。


 もう、ここに来てから、だいぶ()つ。感覚としては、既に数か月以上にも及ぶ。

 お互い、髪の毛もヒゲも伸びない。食事も排泄も、一切ないのだ。たぶん、「あの世」に近いのだろうと思う。


 恵萌は、口をとがらせて、

「だったら、別に、スカートめくってブルマー見せるぐらい、どうってことないでしょ?」

「確かに、興奮はしないけどさ。けど、そういう問題じゃ、なくないか?」

「なんで?」

 本当に不思議がっているらしく、恵萌はキョトンとしている。

 ゴホッと(せき)をして、

「一応、俺は大人だからな。青少年健全育成という観点では、あなたに対して、一定の責任は負ってるわけでさ」

 それを聞いた恵萌は、体の前で腕組みをする。セーラー服特有の、モコモコした長そでが、締めつけられて、さらにふくらんだ。

「育成も何も、もう死んでるじゃん、うちら」

「うーん。まあ、まだ、死んだと決まったわけではないけどなア……」

 否定はしてみるも、龍輝も歯切れが悪い。


 残念ながら、恵萌の言う通りである可能性が高いからだ。何しろ、ここに来る直前の、二人の「最後の記憶」が、すさまじい。

 二人して、ほぼ同時に、大型の車にはねられたのだ。龍輝の記憶が正しければ、2026年の4月16日だったと思う。恵萌は、2026年の「四月の真ん中」としか、覚えていないというが。


 で、次に気がついた時には、この部屋にいたというわけなのであった。

 体は無傷。服装は、車にひかれた時のままであった。

 まさに、龍輝は朝の出勤、恵萌は登校の途中だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ