表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

第十話 実は皆が体験者世代 そしておもちゃの銃声

 敬老レースが終わると、司会の放送が流れた。ずっと、同じ担当者。三年生の女子である。

 なお、先ほど、周囲の生徒が話しているのが聞こえたが、この女の子は放送部部長で、お昼の放送では名物少女らしい。

 トーク内容は、原稿を読み上げる時も、アドリブの時もある。

 いずれも、全て本人が自分で考えているという。


「以上で、プログラムナンバー十四番、敬老レースを終わります」

 スピーカーを通して、スーッと息を吸う音。


 アナウンスは続く。

「……人生の大先輩の皆様、つたない運営だったかもしれませんが、御参加ありがとうございました。私ども立遠(りっとお)第二中学校、生徒一同は、地域のお年寄りを大切にし、教えを受け継いでいこうと思います」


 さらなる息継ぎの後、

「……先日の全校集会では、特別授業ということで、三人の戦争経験者から貴重なお話を伺いました。そういったことも、忘れてはいけない記憶だと思っています。ありがとうございました。おじいさん、おばあさん、いつまでもお元気で。長生きしてくださいね」


 しんみりした空気がグラウンドに広がり、もう一度、静かな拍手が響いた。

(へえー、やるじゃん! 名アナウンス。こういう真面目なのも、出来るのかー)

 感心して、校庭の外側を移動しつつ、恵萌(めぐも)も軽く拍手。

(それにしても――なるほど、そうか。1994年っていったら、まだ戦後五十年も行ってないのか。第二次大戦を知ってる人が、まだ、普通に生きてたんだな)

 新たな気づきであった。


 ちなみに、恵萌と龍輝(りゅうき)が暮らす「本部」にある、タイムマシン。

 あのタイムマシンでは、戦後までしかタイムワープが出来ない。正確には、西暦1949年までしか、さかのぼれない。

 移動可能な期間は、タイムワープを繰り返すうちに、徐々に長く伸びてはいる。何しろ、初回は1975年までしか、行かれなかったのだ。

 だが、一体どんな法則なのかは、全く分からないのであった。


 さて、体育祭。お次だ。

 拍手がやんだタイミングで、またアナウンス。

「それでは、続きまして、プログラムナンバー十五番、二年生による、()(もの)競走です!」


(――来たッ!)

 恵萌の上半身の奥で、心臓がヒョコッと跳ね上がり、緊張で胸がキュウッと締め付けられる。

 いよいよだ!


「――この競技でも、引き続き、本日お越しのお客様に御協力を(たまわ)ります。競技内容としては――グラウンド真ん中をご覧ください。今、実行委員が大きなカードを(かか)げております」


 アナウンスのとおり、腕章を付けた生徒が、男女三人ずつ、ぽつりと、誰もいないトラック内にいた。

 やはり、男子は短パン、女子はブルマー姿である。

 六人は、コースを設営がてら、両手でカードを上げて、ぐるりと、みんなに見せていた。プラカードの、持つ所が無いバージョンだ。

 太マジックで、黒い文字が書かれている。

 うち一枚が、恵萌にも読めた。「帽子をかぶっている人」とある。要は、「お題」であった。


「――見えましたでしょうか? 選手の皆さんには、コースの途中、裏返して置いてあるカードを、一枚ずつ取ってもらいます。そこに書いてある内容に当てはまる人を、会場から探してきてもらいます。そして、連れてきて一緒にゴール。制限時間は一分です。時間切れになると、ピストルが鳴らされます」


 パァンッ!

 説明に合わせ、トラック内の実行委員の一人、男子が、スターターピストルを空へ向けて撃った。

 例を示したわけだ。


 おおー!

 笑い混じりのどよめきが、校庭の外周から起こる。

 自分たちも人ごとではなくて、巻き込まれるかも、という緊張感、期待感も含まれていたに違いない。盛り上がってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ