第十話 実は皆が体験者世代 そしておもちゃの銃声
敬老レースが終わると、司会の放送が流れた。ずっと、同じ担当者。三年生の女子である。
なお、先ほど、周囲の生徒が話しているのが聞こえたが、この女の子は放送部部長で、お昼の放送では名物少女らしい。
トーク内容は、原稿を読み上げる時も、アドリブの時もある。
いずれも、全て本人が自分で考えているという。
「以上で、プログラムナンバー十四番、敬老レースを終わります」
スピーカーを通して、スーッと息を吸う音。
アナウンスは続く。
「……人生の大先輩の皆様、つたない運営だったかもしれませんが、御参加ありがとうございました。私ども立遠第二中学校、生徒一同は、地域のお年寄りを大切にし、教えを受け継いでいこうと思います」
さらなる息継ぎの後、
「……先日の全校集会では、特別授業ということで、三人の戦争経験者から貴重なお話を伺いました。そういったことも、忘れてはいけない記憶だと思っています。ありがとうございました。おじいさん、おばあさん、いつまでもお元気で。長生きしてくださいね」
しんみりした空気がグラウンドに広がり、もう一度、静かな拍手が響いた。
(へえー、やるじゃん! 名アナウンス。こういう真面目なのも、出来るのかー)
感心して、校庭の外側を移動しつつ、恵萌も軽く拍手。
(それにしても――なるほど、そうか。1994年っていったら、まだ戦後五十年も行ってないのか。第二次大戦を知ってる人が、まだ、普通に生きてたんだな)
新たな気づきであった。
ちなみに、恵萌と龍輝が暮らす「本部」にある、タイムマシン。
あのタイムマシンでは、戦後までしかタイムワープが出来ない。正確には、西暦1949年までしか、さかのぼれない。
移動可能な期間は、タイムワープを繰り返すうちに、徐々に長く伸びてはいる。何しろ、初回は1975年までしか、行かれなかったのだ。
だが、一体どんな法則なのかは、全く分からないのであった。
さて、体育祭。お次だ。
拍手がやんだタイミングで、またアナウンス。
「それでは、続きまして、プログラムナンバー十五番、二年生による、借り物競走です!」
(――来たッ!)
恵萌の上半身の奥で、心臓がヒョコッと跳ね上がり、緊張で胸がキュウッと締め付けられる。
いよいよだ!
「――この競技でも、引き続き、本日お越しのお客様に御協力を賜ります。競技内容としては――グラウンド真ん中をご覧ください。今、実行委員が大きなカードを掲げております」
アナウンスのとおり、腕章を付けた生徒が、男女三人ずつ、ぽつりと、誰もいないトラック内にいた。
やはり、男子は短パン、女子はブルマー姿である。
六人は、コースを設営がてら、両手でカードを上げて、ぐるりと、みんなに見せていた。プラカードの、持つ所が無いバージョンだ。
太マジックで、黒い文字が書かれている。
うち一枚が、恵萌にも読めた。「帽子をかぶっている人」とある。要は、「お題」であった。
「――見えましたでしょうか? 選手の皆さんには、コースの途中、裏返して置いてあるカードを、一枚ずつ取ってもらいます。そこに書いてある内容に当てはまる人を、会場から探してきてもらいます。そして、連れてきて一緒にゴール。制限時間は一分です。時間切れになると、ピストルが鳴らされます」
パァンッ!
説明に合わせ、トラック内の実行委員の一人、男子が、スターターピストルを空へ向けて撃った。
例を示したわけだ。
おおー!
笑い混じりのどよめきが、校庭の外周から起こる。
自分たちも人ごとではなくて、巻き込まれるかも、という緊張感、期待感も含まれていたに違いない。盛り上がってきた。




