84. 待って待って待って!
「なんでオレが天国行きを祈られなきゃなんないんですかね!」
プリプリしているガストンへと『え?ナニイッテンノ?』意味フだとばかりに輝く笑顔の大天使ミカエール。
「天使に生まれ変わってボクの副官になれるんだよ?世界の定理がキミの双肩にかかってくるんだ、こんなやりがいのあるタスクはそうそうないと思うよ!ボクも忙しくてね、ドーンと仕事と権限与えちゃうから。部下も師団単位の天使をつけるからさ?」
どう?どう?とワクワク感が伝わってくる。
まったく勝手。
これだから強者ってヤツは。
俺は強くなってもこんなになんないぞ、と心に誓うガストン。
すっかり天使が引いた山頂。
うつむいた老人がジロリとこちらをにらんだ。
目のあるあたりは陰になっているがそこには確かに炎が燃え盛る。
普段の温和なおじいちゃんビャッコはここにはいない。
大魔王パーティの剣士白虎、しかも愛剣斬鉄丸と意識がリンクした『ブチ切れバージョン』!
ああなったらヒトの話なんて聞かない、聞こえない。
ただの戦闘狂の獣だと思って違いない。
だいたい当たり前の意識があればメダマが燃えたりしないし。
「久しぶりじゃな大天使ミカエールよ!!オヌシとまたヤリあえると思うとワシの全身の血液が沸騰しておるわっ!!」
白虎の狂気まじりのオーラがミカエールを襲い、聖なるオーラと拮抗して辺り一帯の空間がはじけた。
ドス黒く赤いオーラが白虎と斬鉄丸を包み、天まで届くピラーのごとく立ち昇った!
「なーーにいってんのビャッコちゃん?キミの相手なんて疲れちゃうからイ・ヤ・ダ・ヨ」
互いのオーラは鋭くせめぎあっているのだけど、そのくせミカエールの表情も口調もノホホン。
昔ながらの悪友とタベってるみたい。
「それじゃあいってみようか!頼んだよガストンくん!」
バチンッ!!!!
大きな音。
ミカエールがガストンの背中を思いっきり叩いたからだ。
叩く手のひらには大天使のマジもんの強烈オーラつき!
いきなり押し出されたガストンは狂戦士白虎の目の前へと吹っ飛ばされたのだ。
ペッと唾を吐き捨てる白虎。
「なんじゃ若造っ!少々力をつけたからと自惚れおったか!!後悔する間もなく滅してやろうぞ!!」
ミカエールとの世界規模の戦闘ができると燃え上っていた白虎と斬鉄丸の狂犬コンビを邪魔したのだ。
狂ったオーラもまた超巨大な狂犬、赤黒く燃え盛るオーラの巨大な牙がガストンを噛み潰そうと迫る。
並みの戦士であれば。
それが魔人だろうと天使だろうと悪魔だろうと、恐怖で指先一つ動かせなかったろう。
狂戦士白虎とはそれほどの存在なのだ。
大魔王様がただの魔人グラディウスであったころからの、最も古くからの仲間であり友人。
比肩する実力。
オールラウンドに最高位の実力者である大魔王様に比べ、突出した剣士である白虎。
剣闘に関してだけなら世界で唯ひとり大王クラスの首を落とすことができる存在。
4大天使であろうが悪魔王であろうが真っ当な剣闘のみの勝負であればその存在を断ち切ることができるのだ。
ただのヨイヨイのおじいちゃんではないし、ベノンやゼブブやベッチーのような『ワールドクラスの強者』というレベルではない。
悪魔王、大魔王クラス。
それはつまり絶対強者だ。
ちょ、ちょ、ちょっと待って、お願いビャッコ老子お願い待ってくださいっ!!!!!
天使たちが後方に退避したにしても、まだ身バレするわけにはいかないガストンだ。
超必死に念話を叫んでビャッコにぶつけようとするのだけど、そんなもの白虎から噴き出す強烈なオーラでかき消されてしまうのだ!!
チャキリッと刀の柄に手を添えた白虎。
ああ、あれって『居合』とかいうヤツだ。
ベノンが見せてくれたアレ。
ということは次の瞬間オレはクビちょんぱってわけだな。
ははは。
乾いた笑いのガストン。
それで?次の生は天使なのオレ?でも大魔王様と魔王国のためにしかこんなのヤッてられないんだよな。。
夜空に遠く輝くお星さま。
暗い丘の上に腰を折ろして膝をかかえて宙を見上げる。
キレイだけど寂しそう。
あきらめでも後悔でもなく。
そんな想いがガストンに浮かんだそのときに。
ガストンの肩にチクリと痛みがはしった。




